2010年03月09日
荒瀬ダム問題について
質問
(平野みどり)
今月2日、蒲島知事は、荒瀬ダム事業継続から一転撤去へとかじを切られました。そのこと自体は大変うれしいことですし、歓迎します。現に、熊本日日新聞のインターネットによるアンケートに答えて、県民の7割がこの方針転換を支持しています。
しかし、そもそも荒瀬ダムは、県議会の議決を経て、平成14年に撤去が決められたダムです。2年前、蒲島知事は、就任直後の6月4日、マニフェストに書いていなかったにもかかわらず、唐突に荒瀬ダム撤去方針の凍結を表明されましたが、余りにも衝撃的なニュースに耳を疑ったことを今でも鮮明に覚えております。
その日から2年間に及ぶ混迷が始まりました。百歩譲って、2年前の時点で撤去への財政的なスキームを見直す必要があったとしても、撤去から一転、何の検証もなく発電事業の継続の判断を発表されたことは、拙速である上に、地元への説明もない、議会の議論もない、きわめて通常の政治プロセスを欠く手法だったと言わざるを得ません。
川辺川ダム問題では有識者会議まで開いて判断をなさったのとは対象的で、もちろん整合性もありません。50年間という長い時間をどうお考えでしょうか。
50年前、流域の皆さんは、ダムができると何もかもよくなるとか環境への影響は全くないと言われ、水利権の行使に同意をされました。しかし、年を追うごとに悪臭がひどくなり、振動に悩まされ続けることになります。よくなるどころではありませんでした。
結局、県が50年前言ってきたことは間違いであったわけで、それを認めることなく、地元に迷惑をかけながら発電し続けてきたこの50年間だったことを、重く受けとめなければなりません。
2年前、撤去凍結を表明されたとき、平成14年からそれまでの撤去に向けての議論や経緯をしっかり検証して理解し、関係者や地元の皆さんに向き合って、丁寧に意見を聞かれた上での判断だったのでしょうか。いいえ、それができるような期間ではありませんでした。
そのように、過去の清算や新たな地元の合意形成も行わず、強引に存続を決めた結果、知事自身がどんなに、2年後に撤去と決めました、皆さんと方向性は一緒だから、2年間の発電継続に同意してくださいと言われても、それは口約束にしかすぎず、信じたくても絶対ひっくり返らないという可能性がゼロではない以上、不安感が払拭できないのです。
さて、今に至る一連のどたばたは、県行政への信頼を著しく損ねてしまいました。知事の責任が重いことは言うまでもありません。さらに、副知事を初め、庁議に出ている方々等県幹部が、なぜ就任直後の知事の発表にしっかり関与し、拙速な発表をとめられなかったのかにも、大いに疑問が残ります。
検証のプロジェクトチームを立ち上げたものの、予想どおり継続が妥当との答えが導かれました。外部の人は入らず、結局は企業局を中心に県の組織内での判断に任せてしまっていた実態があります。
また、県議会はどうでしょうか。知事が就任直後に撤去凍結を発表された際、それまでの議会での議論の経緯や重みを伝えるなどして、結果的に知事をとめられなかったことについては、責任の一端を重く自覚する必要があると思います。
以上を踏まえ、就任直後の撤去凍結発表から今日に至る2年間の経緯についていかがお考えか、知事の誠意あるお答えをお願いします。
次に、水利権の申請取り下げについて伺います。
そもそも、7年前の水利権更新は撤去が前提であり、更新への同意が困難であることは、そのころから指摘されていました。同意が要らないという見込みは、河川法をどう読み込んでも出てきませんし、結果的に水利権そのものについての認識が甘かったと言わざるを得ません。
しかしながら、企業局は、2月24日、地元球磨川漁協の同意のないまま、水力発電専用の県営荒瀬ダムの水利権延長と発電施設などの工作物を置く土地占有許可を国交省九州地方整備局に申請しました。
このため、国は有識者会議を設置し、地元漁協からの意見を聞き判断することになりましたが、今月末の水利権失効は避けられず、少なくとも5カ月から場合によっては1年以上かかるかもしれない状況です。
知事が意図されている2年間の発電継続で得られる利益の積み上げどころか、今後続く多くの関係機関や地元住民を巻き込んだ水利権問題に必要とされる労力や時間、加えて漁業補償等を考えると、これからの負担の大きさの方が危惧されます。
発電期間が1年もないということもあり得る中、膨らむ補償金や存続前提のダムの維持管理費に係る費用を考えると、やはりどこかで申請を取り下げるか、あくまで2年の存続にこだわるかを判断しなければいけないと、そういう時が来ると思われます。
最後まで2年間の発電存続にこだわるおつもりでしょうか。今からでも、2年間の発電継続を断念し、直ちに撤去へのプロセスに全面的に入っていくべきではないでしょうか。
3番目に、撤去に向けてのプロジェクトチームのあり方についてお尋ねいたします。
今後の見通しとしましては、4月1日以降のゲート全開は避けられない上、その後も全開状態がしばらく続くことになると思われます。
撤去に向けては、平成15年に、河川環境に配慮したダム管理対策、ダム撤去工法等について検討を行うため、荒瀬ダム対策検討委員会が設置され、地元住民も含めて、関係者によって検討が進められました。また、この委員会の中に、技術面を中心にダム撤去工法について専門的に検討するダム撤去工法専門部会も設置されていました。
蒲島知事の存続の方針発表後中断していますが、この委員会での議論を踏まえて、発展的に撤去へのプロジェクトチームを再構築させるべきではないでしょうか。そこには、地元住民はもとより民間企業を入れるなど、さまざまな日本じゅうあるいは世界じゅうの英知を集めて開催し、取り組みの手法、撤去の過程が検討、検証されていくことが重要です。委員はぜひ公募枠も設けるべきだと思います。
日本での初のダム撤去がオープンな形で進められることは、学術的にも地域のアピールという意味でも意義があります。
もちろん、ゲート開放後に再生されていく環境や水産業の回復、観光資源としての利益の試算も含めて検証していく必要があります。どう取り組んでいかれるか、お尋ねします。
以上、撤去凍結発表から今日に至る2年間の経緯についてのお考え、次に、水利権申請取り下げについて、最後に、撤去に向けての新たな開かれたプロジェクトチームの立ち上げについて、お尋ねいたします。
答弁
知事(蒲島郁夫君)
ただいま、平野議員より、誠意のある答えをとのお言葉をいただきました。私は、知事就任以来、議会答弁において一貫して誠意を持ってお答えしており、その気持ちは議会の皆様にも御理解いただいているものと思っています。
さて、一昨年6月に、荒瀬ダム撤去の凍結を表明いたしました。議員から、就任直後、マニフェストにも書かれていなかった、唐突な表明だと指摘されました。私は、マニフェストに書いていないことは一切やってはならないと考えてはおりません。
社会は日々動いております。それに適切に対応するのが政治の仕事ではないかと思っております。ただ、撤去を待ち望んでこられた坂本町の皆様には大変申しわけなかったと思っております。
しかし、撤去か存続か、その議論を県議会で十分に行っていただくためには、一昨年6月の段階で、まず凍結の表明をすることがどうしても必要でした。
そして、再検証は企業局に任せるのではなく、全庁を挙げたプロジェクトチームを立ち上げ、さまざまな観点から検証しました。
その検証を経て、同年11月に、深刻な財政危機にある熊本県の現状を考えると、荒瀬ダムを存続させることが適当であると判断しました。
同時に、荒瀬ダムの発電事業を未来永劫続けることは最善の選択ではなく、撤去可能な条件が整えば撤去すべきことも、あわせ表明しました。
しかし、その後の政権交代により、荒瀬ダムをめぐる状況は一変し、再び撤去の判断をいたしました。
その際、撤去に向け、1円でも多くの撤去費用を確保し、県民の負担を軽減したいという思いから、本体撤去工事に入るまでの2年間の発電のための水利権を申請しました。
議員は、2年間に限った発電継続を行った後の撤去は口約束にすぎず、絶対ひっくり返らないという可能性はゼロ%ではないと述べられました。
今回荒瀬ダムを撤去すると決めたのは、水利権の取得そのものが不透明になり、一昨年11月に、ダム存続と判断した前提条件が崩れてしまったことによるものです。また、荒瀬ダムの問題をめぐり国と係争すれば、県政の長期的混乱は避けられません。
したがって、もはや荒瀬ダムの存続という選択肢はありません。既に退路を断って、撤去に向かって進んでおります。
民主党の皆様には、撤去のための国からの支援をぜひ実現していただきたいと考えております。前議会で、民主党の濱田議員は、知事が撤去を表明すれば支援する旨の発言をされました。私は、議会で発言したことは極めて重いと考えています。これには平野議員も同意していただけるものと思います。
私は、この本会議場で、荒瀬ダムの撤去を確約いたします。実際、既に来年度予算には撤去の取り組みに必要な金額を計上するなど、撤去の準備に入っております。
九州地方整備局からは、水利権が失効しても瀬戸石ダムとの放流調整について協議せよとの指導を受けています。仮に水利権失効中でも、水量調整のためのゲート操作を求められた場合、水利権の申請を断念してもダム維持費用が軽減されません。売電収入がゼロで、費用がこれまでと同じようにかかれば、県民の負担はさらに大きくなることでしょう。
私は、撤去費用を確保し、県民の負担を少しでも減らしたいと、その思いから、先日、2年間発電するための水利権の申請を行いました。
最後に、荒瀬ダム撤去に向けてのプロジェクトチームのあり方について述べます。
約5年をかけて、荒瀬ダム撤去について河川工学や環境における検討を重ね、平成20年3月に検討結果が取りまとめられました。
今後、撤去に向けた安全面、環境面での技術を確立するために、荒瀬ダム撤去技術研究委員会を来月にでも設置する予定です。委員については、前回貴重な意見をいただいたメンバーを基本としながらも、日本を代表する有識者を加え、撤去を安全、確実に行いたいと思います。
また、荒瀬ダムが全国初となるダム撤去のモデルとなるよう、その過程をきちんと残し、今後に役立ててまいりたいと考えております。
荒瀬ダム撤去に向けて、今後もさまざまな困難があろうと思いますが、県民、関係者が一丸となり、この目標に向けて力強い一歩を踏み出すよう、心からお願い申し上げます。
(平野みどり)
今、知事に御答弁をいただきました。
誠意ある答弁をしてきたとおっしゃっていますが、撤去を唐突に発表したこと、その行動そのものは誠意がある対応だったというふうには私は思いません。
さらには、全庁を挙げた検証を行ったとおっしゃいますが、やはり内輪で、何か変えたくない、守りたいという思いが働くのだろうというふうに思います。外部にしっかりとした意見を持った方、考え方あるいは工法なりを持ってらっしゃる方がいるとすれば、それを取り込まない手はありませんので、今までの全庁を挙げた取り組みではだめだったということを率直に反省していただきたいと思います。
まず、河川法による水利権についての解釈については、政権がかわったからといって変わったはずがありません。自民党政権がそのまま続いていたとしても同じです。7年前の水利権更新はダム撤去を前提としたものであり、それゆえに流域の皆さんは7年間ならと水利権更新に同意されたのです。
2年前に今日の状況は既に予見されていました。2年前に事業継続と知事が考えられたにしても、水利権の同意は困難で、発電継続はできないと地元や私たちは言っていましたから、明らかに行政の見通しの甘さ、行政上の瑕疵があったと言わざるを得ません。そのことへの反省と検証が必要です。
30億円かかる設備を一たんつくってしまったら、タービンですけれども、それをずっと使い続けたいと思う気持ちは皆さんに出てくると思います。それで地元の方がさらに犠牲を強いられる形になったということも考えられます。
国との係争についてですが、水利権に関しては、法の解釈が国と県と違うとおっしゃいますが、私たち、法律に基づいてそれを読み込めば、国と争うこと自体が無意味だということがよくわかるというふうに思います。
さらには、選挙期間中に、民主党の議員の中から撤去費用に関しての発言があったこと、私も確認しております。その後、政権が民主党に移って、前原大臣も知事と何回もお話をされたと思いますが、そのときになかなか色よい返事がもらえなかった、これはやはり政権についてから、どの部分で、だれが、責任を第一義的に担いながらしっかり働きかけ、連携をしながら取り組んでいかなきゃいけないかということを考えたときに、県が継続と撤去の両にらみだったことを見抜いていたのではないかと私は思います。それで、はっきりと撤去に向けての思いが見えなかった中で、いろんな甘い言葉といいますか、撤去に関して全面的に国が出しましょうなどということが軽々に発言できるはずがありません。
民主党は、社会資本整備交付金を設けました。これや、さまざまな制度を今後も活用できるように、私どもも与党側として積極的に取り組んでまいります。
まずは、謙虚な反省をもとに、だれだれの責任だということで転嫁することなく、撤去に向けて住民の皆さんと思いを一つにしていただくことをお願いして、次の質問に移らせていただきます。
投稿者 hirano1 : 20:09