川辺川ダム問題について [代表質問(2005年9月)]
質問
(平野みどり)
こんにちは。県民クラブの平野みどりでございます。
議員の皆様方には、総選挙本当にお疲れさまでございました。いい結果が出られた方と肩を落とされている方、その1人ですけれども、今回の結果が地方にとってもいい方向に向かってほしいなと願うところです。ただ、今回は、やはり小泉さんに始まり、小泉さんに終わったと言っても過言ではないと思います。
これですべての法案を与党は通していける環境が保障されたということになりますので、さまざまな立場からの視点が黙殺されるようなことがあってはならないと思っています。特に、都会の豊かな人と地方のそうでない人の二極化がこれ以上進んでいかないように、地方議会の立場からも、これまで以上に声をしっかりと国に届けていく必要があると思っております。この点においては、本議会の議員の皆さんも同じ思いであると思いますので、ともに頑張ってまいりましょう。
さて、通告に従いまして質問に入らせていただきます。
今回は代表質問ということもあり、午前の馬場県議の質問とかなりダブっているところがありますので、その点御容赦をよろしくお願いいたします。
まず、川辺川ダム問題について質問いたします。
利水対象農家へのアンケートの結果と収用委員会の裁定についてお伺いいたします。
川辺川ダムを水源とするかあるいは別の方法で水を確保するかが争点となっている国営川辺川土地改良事業の新利水計画策定に向けて、8月22日に、九州農政局と熊本県及び関係市町村は、地元対象農家へのアンケート調査の結果を発表しました。
事業対象農家は全体で4,240人で、アンケートの回収率は88%でした。その中で、国営事業に参加の意向をお持ちの農家が全体で40%、さらに、これを概定した事業実施地域内、つまり水が必要と強く思っておられる農家の多い区域に ――これは1,378ヘクタールですが、限って見てみますと、約72%の農家が国営事業に参加の意向です。そのうち、ダムからの取水を望ましいという方が約74%の1,061人です。
つまり、今回のアンケートに回答された方々でダム案を希望される方は、全体で 1,305人、概定した事業実施地域内で1,061人だったわけですが、事業計画決定においては、土地改良法で義務づけられている事業対象農家の3分の2以上が変更計画に同意することが要件ですので、この対象農家4,240人のうちの25%から30%がダム案希望ということであれば、3分の2にはほど遠いという状況です。
さらに、アンケートの中で注目すべき点は、問い4への回答です。問い4は、こう聞いております。「全ての関係農家の方にお聞きします。」「あなたの農地がかんがい区域から外れることとなった場合、地区除外の同意が必要となりますが、地区除外に同意して頂けますか。」「なお、地区除外の場合は、国営かんがい事業に係る農家負担金や維持管理費はありません。」これが問い4です。
この問い4には、アンケート回答農家全体の約91%の方、これは3,381人ですが、事業区域除外に同意すると回答して、さらには、水が必要と強く思っておられる概定した事業実施地域の農家ですら、事業区域除外に86.9%、これは 1,636人ですが、の方々が同意すると回答しています。このように、多くの農家が、さまざまな事情の違いはあれ、事業区域除外に同意するという回答をしたことは注目すべき点であると思います。
いずれにしても、今回のアンケートの結果をさらに精査し、水を必要とされている農家への現実的な取水方法を考えていかなければなりません。
また、今回のアンケート結果が発表された1週間後の8月29日に、熊本県収用委員会は、国土交通省九州地方整備局に対し、川辺川ダム建設に伴う漁業権の収用申請を取り下げるよう勧告し、今月の22日までにその回答を求めています。この日までに国交省が取り下げない場合は、9月26日の審理において却下の裁決が下される見通しです。もう既に国交省は勧告を受け入れる模様だという報道もなされている段階ですが。
県収用委員会は、3年8カ月という長い時間をこの収用案件の審理に費やしました。この間、平成15年に、福岡高裁は、川辺川ダム事業の柱の一つである利水事業の変更手続に違法性があったとして、利水訴訟原告団勝訴の判断を示しています。その後、収用委員会は、新たな利水計画のもとで漁業権収用について判断するため、計画策定状況を見きわめてきたのです。ある意味、もうこれ以上は待てませんという収用委員会の取り下げ勧告です。
最終判断は国にゆだねられましたが、収用裁決を求められるような段階ではなく、計画発表から39年を経て、川辺川ダム事業計画は白紙に戻ったと言っても過言ではありません。
この間、ダム事業計画による治水が前提であったため、国による八代の萩原堤防の補強、球磨川中流域の河川改修、河床掘削など、河川整備は放置されてきた現状があります。ダム事業計画にこだわり続けるとすれば、今後も長い年月、不十分な河川整備のため、流域の皆さんは危険と隣り合わせの状態が続きます。また、水を必要とされる農家に一日も早く水の手当てができるように、現実的な取水方法も考えていかなければなりません。
農家への水も河川整備も待ったなしの段階です。熊本県として、国土交通省と農水省に対して、ダム事業からの撤退の意思をあらわし、両省に対してダムによらない利水と治水への早急な対応を求めていく段階ではないでしょうか。
収用委員会の状況とも勘案して、知事の御見解を伺います。
答弁
知事(潮谷義子さん)
国営川辺川土地改良事業については、平成15年5月、利水訴訟におきまして事業主体の国が敗訴し、事業計画が白紙に戻るという極めて特別な事情を抱えています。
このため、新利水計画の策定に当たりましては、地域の対立や混乱を招くことがないよう、県が総合調整の役割を担いながら、関係6団体による事前協議での議論を重ね、水を待ち望む農家に一日も早く水をお届けできるよう、国、県及び市町村が一体となって取り組んでいるところです。
本年6月からは、第5回目となります意見交換会及び集落座談会を開催し、水源案として川辺川ダム案と相良六藤堰案の2つの案を農家にお示しし、アンケートを通して農家の意向把握に努めてまいりました。そして、その結果の概要につきましては先月公表したところでございますし、ただいま平野議員の質問事項の中にも詳細に触れられているとおりでございます。
現在、このアンケート結果を詳細に分析中でございますが、今後は、分析結果を踏まえて、事業実施地域の確定や水源の選択も含めて、新たな利水計画を取りまとめることとなります。
いずれにいたしましても、本事業が成立するためには、関係農家4,240人の3分の2以上の同意取得という土地改良法上の要件をクリアする必要がございます。しかし、今回のアンケート結果では、いずれの案でも3分の2以上という確認ができない課題があり、その確実性を十分に見きわめた検討が必要であると考えています。
次に、治水対策についてですが、先週の台風14号を初めとして、これまでたびたび大雨等により大きな被害が発生している球磨川流域の治水対策に万全を期すことは、河川管理者である国土交通省とともに、県にとりましても当然の責務であると考えています。
去る8月29日、川辺川ダム本体着工に必要な漁業権等の収用を審理する県収用委員会は、国土交通省に対して、収用裁決申請の取り下げ勧告を行いました。今後、起業者であり、かつ河川管理者であります国土交通省が、今後の流域の治水対策についてどのような判断のもとに進めていかれるのか、まずは見きわめていく必要があると考えています。
県としては、その判断を見きわめつつ、治水に当たっては流域の治水対策に万全を期しますとともに、利水にあっては、水を待ち望む農家に一日も早く水をお届けできるよう、国土交通省、農林水産省及び地元市町村との協議を密にしながら、適切に対応してまいりたいと考えております。
(平野みどり)
アンケートの結果に関しては、本当に私、この問い4を見てびっくりしました。水がとても必要だと思っていらっしゃる方々の概定区域、その中でも86.9%の方がいろんな事情がおあり――周囲の方々が必要だということでやっぱり必要、本当は外れたいけれども入っていらっしゃるという方もいらっしゃるでしょうし、周りは要らないというけれども、やっぱりここは欲しいと思っていらっしゃる方、いろいろさまざまだというふうに思いますけれども、事業区域除外に86.9%の方が同意するということは、このダム事業ではなくて、本当に現実的に早急に対応できる取水の方法を望んでいらっしゃることがこれにあらわれているのではないかなというふうに思った次第です。
あと治水に関しましては、実はここに、清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会の皆さんが速報として出された台風14号と川辺川ダム計画についてのペーパーがあるのですが、これは写真つきで多分知事のお手元にも届いていると思いますが、これによりますと、本ダム計画では、2日間の雨量を440ミリと想定していて、最大流量7,000トンというふうに、基本高水流量を想定しているわけですね。
ところが、今回台風14号、これは9月5日から6日の雨量は406ミリ、国土交通省は440ミリのところを406ミリだったのですが、これは国の基本計画の約92%です。これで、そのときの最大流量が4,500トン、つまり基本計画の約64%の流量しかなかったということなのです。ということは、今回の雨量は、国の基本計画の92%に達したにもかかわらず、流量は64%だったということは、雨量の割には実際に発生した流量が少ないという傾向がこれにあらわれているのではないか。このことからも、川辺川ダムは過大な計画であるのではないかというふうに思われると。
異常気象が続いておりまして、カトリーナのようなアメリカを襲った大きな台風も発生します。最大流量7,000トンのこのダムが、想像を絶するような大量の雨が降ったときに、このダムが決壊したときの災害を考えたとするならば、ダムをつくっておかないで治水をしていく、河床掘削ですとか河川改修をやっていく、この方が短期間にもできますし、毎年毎年困っておられる流域の皆様方の安全を一日も早く守ってさしあげられることになるのではないかなと思っています。
ですから、質問の中にも述べましたように、国土交通省のダム事業がある限り、国土交通省は、流域の具体的な河川改修に本腰を入れていかないと思うのです。ですから、やはり県としても、県と一緒になって国が河川改修に当たってもらえるように、このダム事業はもう必要ではないのではないかという判断が迫られているのではないかと思っているところです。よろしく御判断をお願いいたします。