障害児の療育と教育について [一般質問(2001年12月)]
◆(平野みどりさん)
教育長から御答弁いただきましたが、むしろこれは財政の皆さんにぜひお願いしたいということです。教育現場からいろんな声が出て、教育委員会の方も予算獲得に向けて頑張っているところだと思いますが、財政の皆さんに、二十一世紀を担う子供たちの教育に関しての重要性を十分理解していただいて、予算づけをお願いしたいと思っております。
熊本養護学校で看護婦さんの配置がまだされていません。手弁当でお母さんたちが配置されていますけれども、来年度からはどうするのだろうと本当に心配なさっています。この点についてもぜひよろしくお願いいたします。
それから、私学に関しても、多様な学びの場という意味で、公立、私学を問わず、子供たちの学びの場を保障していただきますようによろしくお願いいたします。
次に、障害児の療育と教育について伺います。
まず一点目なんですが、学校教育法施行令改正に対する県教委の考え方ということで、ちょっとわかりにくいかもしれませんけれども、よろしくおつき合いください。
本年一月に出された二十一世紀の特殊教育のあり方についての調査研究者協力会議の最終報告については、既に二月の定例県議会の私の代表質問で、障害を持つ子供のニーズに対応する教育を進めていく旨の教育長の御答弁をいただきました。
ところが、それから四カ月後の五月、この最終報告に基づいて学校教育法施行令の改正案が発表されましたが、この改定内容は、現在普通学級に通っている多くの障害を持つ子供の現状を無視したものでした。つまり、特別に合理的な理由がある場合という条件つきで障害を持つ子の普通学級への措置を認めようというもので、障害が二つ以上重複している子、介助が必要な子、医療的ケアが必要な子、自閉症や情緒障害など対人関係に障害がある子については排除しようというものでした。当然のことながら、文部科学省のこの改正案に対しては、全国各地から大きな疑問が沸き上がりました。
子供の権利条約では、障害による差別を禁止し、保護者と本人の意見表明権をうたっています。これまで先進国の中にあって、日本だけが分離教育の原則を崩してこなかったため、国連やユネスコからも是正の勧告を受けていました。アジア諸国でも、中国や韓国など、分離ではなく統合、すなわち同じ場所でともに育つ教育へとかじを切っているのです。
そして、何より全国には多くの障害を持つ子供たちが現在普通学級に通っている実態があります。それは、皆と一緒にいたい、地域の子供たちとともに育ちたいという当たり前の願いに各市町村の教育委員会が対応してきた結果です。国の法整備が進まない中、時代の要請に応じてさまざまな努力が払われてきました。
WHO、世界保健機構は、障害を持つ人の自立のゴールは、パーティシペーション、つまり社会参加の実現であるとしています。社会参加はさまざまな人の中にあって初めて実現できることであり、長い間日常を切り離されてきて、卒業後にそれまで離れていた人たちの中で社会参加と言われても、簡単に適応できるものではありません。
さて、学校教育法施行令改正という文部科学省の動きに対して、十月三十、三十一日の関係国会議員の質問に対して、文部科学省は、
一、就学指導は市町村の権限となったのだから、その権限に文部科学省が口を挟むつもりはない、
二、親の意見を十分に聞くことは文部科学省としても進めており、その指導は続ける、
三、現在普通学級に就学している子供たちを排除するようなことはしな
と答弁しています。そして、当初九月に公表され、パブリックコメントが求められるはずだった改定案も、内閣法制局の指摘を受けて内容が再検討されており、パブリックコメントは十二月にずれ込んだようです。
このように、当事者団体や保護者などの働きかけにより、施行令改正反対の声が上がり、文部科学省に一定の影響を与えたようですが、今後も地域の学校を選択する子供たちに制限を加えることがないよう、推移を見守っていきたいと思います。
就学事務については、国の機関委任事務として地方自治体が行っていましたが、地方分権一括法により地方自治体の責任に変わりました。その中で、就学先の決定に関しては、多くの都道府県、市町村の教育委員会において、本人や保護者の意思を尊重することについて確認され、国も追認せざるを得ない状況にありますが、この点に関しての熊本県としてのお考えを改めて教育長にお尋ねいたします。
次に、自閉症児等の療育について伺います。
障害を持つ子供には、療育が重要であることは御存じのとおりです。療育とは、つまり、障害のない子への幼児期の保育とは異なり、医療的なケアを含む生活習慣の習得を目指した支援、対人関係づくりの支援などを障害に応じて行うことを指します。熊本県でも、松橋町のこども総合療育センターの建てかえに伴い、今後の療育機能の向上が計画されています。
私は、つい先日、自閉症という脳の機能障害を持つ子供たちが、就学前に療育を受けている熊本市室園にある通所施設三気の家を訪ねました。自閉という障害は、一つのことにこだわり続けたり、パニックを起こしたり、人とのつながりをつくることができなかったりという障害で、一時も目を離すことができないという意味では、重度の身体障害を持つ子供たちと、また違った親の苦労があるようです。親も精神的にぎりぎりに追い詰められて、知らず知らずに我が子をたたき続けていたとか、もう少しで親子で命を絶っていたかもしれないなどと、心身ともに疲れ果てる切実な実態が語られました。子供たちは一見障害があるようには見えない場合がほとんどで、周囲から親のしつけが悪いからという目で見られることのつらさも、私たちの想像を超えるもののようです。
しかし、幸運にも、やっと人づてで三気の家を知り、指導員による適切な療育を受けるようになると、子供たちはみるみるうちに安定を取り戻していき、人とのコミュニケーションが改善され、基本的な生活上の習慣が身についていくそうです。療育がいかに大切であるかを力説されていました。私も指導の様子を見たりお話を伺いながら実感することができました。
ところが、残念なことに、保護者の皆さんにお話を聞くと、まだまだ行政の相談窓口で三気の家を紹介された方は少なく、さらに、支援の手が届かず、子供と向き合うだけで追い詰められている保護者もおられるのではないかと心配しています。
さて、県としては、療育に関する認識は既に十分持っておられると思いますが、子供や保護者の療育ニーズの把握や相談窓口からの既存の各療育機関への適切な紹介など、療育支援をどう行っていくのかを健康福祉部長にお尋ねいたします。
また、厚生労働省は、各県一カ所と指定都市十二カ所に自閉症発達障害支援センターを置く事業を平成十四年度からスタートさせると聞いております。ここでは、本人や家族への支援のほか、研修機能も含まれているようで、まさに保護者が待ち望んでいた機関であり、療育や教育に当たる人たちにとっても必要なセンターであると思いますが、熊本県は今後どのように取り組んでいくのかも健康福祉部長に伺います。
次に、療育と教育の連携の必要性について伺います。
障害を持つ子供が地域の学校に通うことを選択する場合、先ほどから述べてきましたように、子供のニーズに合った支援が必要です。例えば、自閉症の子供の場合は、学科などの教育とは別に、またそれらと並行しながら療育的な支援が必要となります。
ところが、保護者の皆さんが一様に不満を持っておられるのが、小学校に入学するや否や、これまで適切な療育により身についてきた生活習慣やリズムが、またコミュニケーションのパターンなどががらがらと崩れて、子供の安定が損なわれる場合が多いということです。
これは、教育現場で、障害や療育についての教職員の学びの場や研修の場が準備されていないことによると思われます。そして、これは自閉症に限ったことではありません。障害児学級を持った教員には、年に一度研修があるようですが、後はそれぞれの先生に任せ切りになっているのではないでしょうか。実際、育ちの場である学校で、子供が医療的ケアや療育的側面を必要としている場合、療育機関や医療機関との連携や人事交流を行ったり、療育の知識を教員がみずからつけるための研修の機会を準備していくべきだと思います。教育現場での療育と教育の連携の必要性について、教育長にお考えをお尋ねいたします。
次に、教員の研修と教育環境の整備について伺います。
盲、聾、養護学校では、これまでの各学校で培ってきた専門性に、子供たちの社会参加の実現を可能にする二十一世紀にふさわしい専門性を加味し、それを地域の学校でも実践していけるよう、より開かれたセンター的な教育機関となる必要があると思います。そして、子供を中心に、障害児学校の教員と地域の学校の教員が互いに知識や技術を共有し、学び合っていく必要があるのではないでしょうか。文部科学省の中には、既にその方向性を打ち出している専門家もおります。
ところが、障害児学校の教員ですら、障害児教育の免許状取得のための認定講習枠や研修を受ける機会が限られている中、地域の障害児学級や障害児を担任する通常学級の教員が、障害について体系的に学ぶ場や、子供が学校教育を終えた後の社会参加のあり方を含む二十一世紀の福祉観や社会資源について学ぶ場が十分に用意されていないと言っても過言ではありません。
熊本県としては、今後の障害を持つ子供たちの教育に当たる教員への必要な講習や研修の機会をどのようにつくり、実態に即し、かつ将来を見据えた計画的な教育環境整備をどのように進めていくおつもりなのか、教育長にお尋ねいたします。
まず初めに、二点目の自閉症児の療育について健康福祉部長にお尋ねし、その後、一点目、三点目及び四点目について教育長にお尋ねいたします。
◎健康福祉部長(田中明君)
自閉症児等の療育についてでございます。
障害児に対する療育は、障害の早期発見あるいは早期療育とともに、発達段階に応じて適切な支援を行っていくことが極めて重要でございます。
このため、県では、福祉総合相談所を中心に、福祉事務所あるいは保健所で、各種の専門的相談や情報の提供などを行っております。また、毎年新しい情報を加えた療育の手引を作成しまして、関係機関や保護者の方々に利用いただいているところです。
一方、市町村におきましても、保健婦等によりまして児童やその保護者への保健指導を実施しておるところですが、相互の連絡調整が十分でないなどのこともございまして、保護者の方一人一人に細かな療育支援ができていない面もうかがえます。
昨年の社会福祉事業法等の改正に伴いまして、平成十五年度から、市町村において新たに相談支援の業務を実施されることとなっておりまして、これを機に、市町村との連携をさらに深め、技術的支援等も積極的に行ってまいる所存です。
また、県では、現在こども総合療育センター機能の拡充に向けて再編整備を行っているところですが、このような機会をとらえまして、障害児やその保護者に対し適切な支援が行われるよう、県、市町村の役割分担を明確にし、相互が緊密な連携を行える総合的、また体系的な療育システムの構築に向けて検討してまいります。
なお、自閉症、発達障害支援センターにつきましては、自閉症に対する専門的な相談支援を行う拠点施設でございまして、高機能自閉症やアスペルガー症候群など、自閉症の周辺領域にある発達障害も対象としております。初年度の平成十四年度は全国で八カ所、その後順次各県に整備される予定と聞いておりますが、本県におきましても当事業の必要性について認識しておりまして、早期実施に向けて検討してまいります。
◎教育長(田中力男君)
まず、学校教育法施行令の改正についてでございますが、この政令で定めております盲、聾、養護学校に就学する児童生徒の障害の基準等について、平成十五年四月の新入生から適用する予定で、現在見直しがなされているところでございます。詳細な内容につきましては明らかにされておりませんが、その基本理念は、障害のある児童生徒の視点に立って、児童生徒の特別な教育的ニーズを把握し、必要な教育的支援を行うことというふうに理解いたしております。
そこで、就学指導に当たりましては、これまで以上に、障害の種類や程度の判断だけでなく、その地域や学校の状況、児童生徒への支援の内容など、総合的に判断して進めていくことが重要になってまいります。特に、本人や保護者等が十分に意見を表明する機会を設けますとともに、障害のある子供が一日体験入学する機会をつくったり、保護者等への必要な情報提供を行ったりして、本人や保護者等の理解を得ながら、丁寧な就学指導が行われることが大切になるというふうに考えております。
こうしたことや国の動向等を踏まえながら、本県としても、就学関係事務の権限と責任を有する市町村教育委員会が適切な就学指導を推進できるように、密接に連携しながら支援してまいりたいというふうに考えております。
次に、療育と教育の連携の必要性についてでございますが、現在、小中学校の特殊学級には、さまざまな障害のある児童生徒が在籍しております。特殊学級で学んでいる子供たち一人一人の障害の状態を正確に把握し、それに応じた適切な教育を保障するためには、今後ますます療育との連携が必要になってくるものというふうに理解いたしております。
次に、教員の研修及び教育環境の整備についてでございますが、小中学校の特殊教育に携わる教員の研修につきましては、県教育委員会では、毎年、特殊学級担任研修会と通級指導に関する研修会を実施いたしております。また、熊本市及び各教育事務所管内でも、種々の研修会が実施されております。
免許状取得のための認定講習につきましては、これまでも、他の教科に比べまして特殊教育に関する科目の受講者枠を広げて実施しております。本年度につきましては、県内の受講希望者はすべて受講できている状況にございます。今後も、特殊教育の重要性を十分に認識しながら、できる限りの配慮をしてまいりたいというふうに考えております。
また、現在実施しております特殊学級学習成果発表会等を通しまして、県民の特殊教育やあるいは障害に対する理解の推進に努めますとともに、盲、聾、養護学校と地域の小中学校との交流もさらに推進してまいりたいと考えております。
今後とも、校長を中心とした校内における日ごろの研修等の充実はもとより、各種研修会においても、内容の見直し、充実を図り、管理職を初めとする教職員が、特殊教育及び障害児に関する理解を一層深めていただくよう、そのような取り組みをしてまいりたいというふうに考えております。