教職員不祥事と職員採用のあり方について [一般質問(2002年12月)]
◆(平野みどりさん) 知事が言及されております九四年に日本も批准しました子供の権利条約には、学校の決まりは、人はだれでも人間として大切にされるという考え方から外れるものであってはならないということで、日本のほとんどの中学校で丸刈り校則は廃止されたんです。全国の約九五%の公立中学校で丸刈り校則を廃止しています。その中で残っている百四校、これは熊本県では全体で五四%に当たりますが、突出しているということを私たちはしっかりと認識する必要があるのではないでしょうか。
一人でも苦しい、つらい、悲しいというふうに思っている人がいましたら、その人の気持ちに寄り添うということをすべきではないでしょうか。選択される必要はあるのですが、強制されることは絶対に許されないと私は思います。
ぜひ教育現場での前向きな取り組みを今後も期待したいというふうに思っています。
次に、教職員不祥事と職員採用のあり方について御質問いたします。
一昨年来、教職員の不祥事を報道する記事が相次いでいます。新聞を開くたびに深いため息が出て、やり場のない怒りとも戸惑いとも言いがたい思いを感じてしまうのは、私だけではないと思います。
こういった事態を氷山の一角だと言う人もいれば、社会の中には、教員など知識層を含めてどの層にも問題を起こす人は少なからずいると言う人もいます。
しかし、本来、親と同じように信頼される大人として子供の成長を支援し、寄り添っていくべき教員の中に、その信頼を失墜するような不祥事を起こす人がいるとすれば、最悪の大人のモデルを見せつけられる子供の側からすると、彼らの心と体の成長に大きな影を落としかねない深刻な事態であることを認識しなければなりません。
県教育委員会は、三日付で、六件八人の懲戒処分を発表しました。その中には、口にするのも情けないのですが、女子高生をわいせつ目的で誘拐し乱暴した容疑で逮捕、起訴された県立高校の教諭、酒気帯び運転した中学校の教諭、児童に体罰を加えた小学校の教頭、体罰で生徒に鼓膜を破るけがをさせた県央の県立学校の講師など、計八人が懲戒処分とされました。大量処分直後の五日にも、またもや阿蘇町の中学校での教諭による生徒への暴力事件も発覚しましたが、この先も続くのではと、大変憂慮しています。
熊本日日新聞によると、さきの教頭のケースは、友達とふざけていた男子児童を逆さづりにした後、泣いている児童に、負けず嫌いだもんねと声をかけ、ふざけるなと反論されて立腹、ほかの児童たちの面前で側頭部を平手打ちにし二回押し倒した、その後、児童を理科室に呼び出し、床をけりつけるなどおどし、児童は過呼吸になったとのことです。
県教委が一度に八人もの教師を大量処分する厳しい姿勢を見せたのは極めて異例で、頻発する教師の不祥事に歯どめをかけるねらいがあるとのことですが、大量処分などあってはならないことであり、ある意味、これだけの犯罪を含む不祥事を起こした教職員ですから、当然の処分と言わざるを得ません。
一体これらの不祥事の原因は何なのでしょうか。私には、このような懲罰人事だけで、今後こういった問題に歯どめがかかるとは思えません。そこには構造的な問題があるのではないでしょうか。
そもそも、子供たちのともに学び合い、育ち合う教育を担うに当たり、教員には当たり前の人権感覚が求められますが、その責務を負う教員が人権をないがしろにしてきた結果がこれら不祥事につながっています。
教員に対する研修は、初任者研修を初め、中堅、管理職などに対してもたびたび行われていますが、一体その中で人権にかかわる研修はどのように行われてきたのでしょうか。加えて、現場での日々の教育活動の中で、教員自身の人権意識を高める活動がどのように行われてきたのでしょうか。
また、教育課程改訂による授業編成の複雑化、新しい教育技術や手法など、時代のニーズへの対応、さらには、職場での校務分掌の複雑化、課外や生徒指導などでの多忙化など、教育現場はそういった問題を抱えていると言われていますが、そういったことでのストレスや悩みをため込まないための職場内での会話の時間やお互いを支え合うゆとりが全くとれなくなっていて、個人が孤立化してしまいがちだと、切実な声が教育現場から上がっています。
また、これから望まれる管理職、つまり学校長には、教育技術や教育理念、さらには子供たちや自分たちの生き方も含めて、民主的な教育論議を学校現場で展開するためのリーダーシップが必要であるはずですが、少なくともそんな雰囲気や時間がつくられていないと、多くの現場から悲鳴が上がってきています。学校が上意下達の管理型集団になってしまっては、教職員のストレスはたまる一方です。
職員会議が形骸化してしまい、今は連絡事項通達の場になっており、発言が奨励される話し合いの場には全くなっていないということは、私は以前にも指摘いたしました。先般、熊本日日新聞で、教育委員会にはレイマンコントロール、つまり教育関係者ではない地域の良識者による指揮監督の原則が求められている、しかし、熊本県と九十四市町村のうち、教職員出身の教育長は六十二人の六五%、教職員出身の教育委員長は四十人の四二%、計百二人の五三%に上り、その大部分が校長退職者だったとありました。教育現場が子供たちを含めて超ストレス社会になってきている中で、いろいろな立場の大人の目や考えを注ぎ込み、風通しをよくしていくことが求められています。しかし、すべての人がそうだとは言いませんが、校長退職者が、教育長として風通しをよくするその役割を果たせるとはとても思えません。長年の管理職側からだけの発想で支配されては困ります。
るる述べてきましたが、今回の不祥事の根本原因はどこにあるのか、単に個人の問題として片づけるのではなく、それぞれの事例の背景を丁寧に検証し分析していただきたいと思います。既に県教職員不祥事防止対策検討委員会を設置しておられますが、そこでの検証はいかが進んできて、今後どのように進むのでしょうか。場合によっては、このような事態が起こらないようにするため、教育行政や心理学などの専門家の協力を得て、実効性のある処方を考える必要があると思います。これまでと今後の取り組みも含め、教育長に御所見を伺います。
また、関連して、教員採用のあり方についてもお尋ねします。
厳しい財政状況と少子化への対応ということで、近年採用が手控えられています。そして大量の臨採や常勤、非常勤講師でその穴が埋められているのが現状です。
その中で、教員採用に当たっては、もっと現場の実態を反映した工夫が必要ではないかと思われます。これは本県の採用についてよく耳にすることですが、何年も臨採で現場で実績を上げてきた人が、毎年採用試験を受けるが合格しない、仕方なく他県の採用試験を受けざるを得ない、また、年齢制限を超えてしまい、とうとう本採用されず、他の仕事を探そうとしても、年齢と折からの不況で極めて厳しい状況であるなどという実態です。
つまり、これらの臨採の先生たちは、毎年更新されているわけですから、教員としての仕事をそれなりに評価されていることを意味します。また、何年も現場にいれば、あらゆる意味で精通してきますので、ほかの職員からも保護者からも信頼を得てきます。さらには、担任や校務分掌も本採用の教員並みに担っているケースも多くあります。もちろん、すべての臨採の先生を本採用すべきだと言っているわけではありませんが、少なくとも多年にわたり更新し続け、採用年齢制限ぎりぎりまで働かせて、本採用にはとうとうなりませんでしたという残念なケースを放置していいものでしょうか。あんないい先生が本採用にならないで、信じられないような不祥事を起こす本採用の先生がいるという率直な声を教職員からも保護者からも聞きます。
若者の雇用、新規学卒者の雇用を制限しろと言っているわけではありませんが、ある意味、現場での研修と実践を重ねてきた臨採の先生を臨採状態でずっととどめ置くというのはいかがなものでしょうか。これまで述べてきたような実態も踏まえ、現在の熊本県における教員採用にかかわる基準なりあり方なりについて、県教委としてはいかがお考えか、あわせて教育長にお尋ねいたします。
◎教育長(田中力男君) 教職員の不祥事が相次いで発生いたしまして、私自身大変な憤りを感じておりますとともに、県民の皆様方に大変申しわけなく思っております。
事件の当事者につきましては厳正な処分を行ったところでありまして、再発防止に粘り強く努めますとともに、信頼回復に向け全力を注ぐ所存であります。
県教育委員会では、再発防止に向けた取り組みの一つとして、熊本県教職員不祥事防止対策検討委員会を設置いたしました。これまで四回にわたる会議の中で、本県で発生した不祥事例を中心に、教職員研修、職場におけるコミュニケーションや管理職のリーダーシップのあり方等も含め、問題点や課題を把握いたしまして、具体的な対策について検討しているところでございます。
また、この会議の中でも大学教授等の有識者から意見を伺う場も設けておりまして、有識者からは、事故防止には職場の雰囲気づくりや人間関係の構築が非常に大切であること、継続した研修が必要であることなどが提言されております。
今後、さらに検討を進めまして、学校現場で生かされる内容となるように、本年度内をめどに具体的な対策を取りまとめたいと考えております。
次に、職員採用のあり方についてでございますが、知識の量のみにとらわれず、教育的情熱と豊かな感性を持ち、柔軟な思考のできる人材の確保が必要であると考えております。職員の選考に当たりましては、単なる筆記試験の結果のみに基づくことなく、さまざまな実技試験、面接試験、模擬授業、あるいはスピーチ等の評価を重視しながら、人物を見きわめるよう努めているところでございます。
臨時採用教員を経験した受験者の場合、現場で培ってきた指導力や専門性を、集団討論、あるいはスピーチ、あるいは模擬授業等の考査の中で発揮し、結果的に採用者の中に占める臨時採用教員経験者の割合は高い割合となっております。ちなみに、平成十五年度合格者の中に占める割合は七二%ということになっております。
今後とも、多方面からの研究を行いながら、どのような方法が人物を見きわめる上で効果的なのか、十分に検討を進めてまいりたいと考えております。