障害者自立支援法について [一般質問(2006年2月)]
1) 地域型福祉に向けての予算について
近年、熊本市を中心として、長年施設や病院で生活していた重度の障害を持つ人たちが、自己決定と自己選択に基づく新しい生活を、地域の中でスタートさせています。また、知的障害を持つ人たちも、養護学校卒業後、即施設に入所するのではなく、一般就労に入ったり、小規模作業所や通所授産施設を利用し、地域の人たちの中で暮らしていくという実態が増えてきました。そういう意味で、これまでの支援費制度は、障害を持つ人たちの地域での自立生活を、大いに後押しした制度であったと言えます。
しかし、昨年11月に成立した「障害者自立支援法」は、限りなく介護保険の仕組みに近づいた制度設計になっており、長時間介護の保障、社会参加の保障、個別ニーズの適切な判定などが本当に成されるか、あるいは、これまで徐々に築き上げられてきた障害者福祉制度の破滅的後退が起こらないのか等々、不安の声は未だ渦巻いております。
そこで、今般の新しい制度において、本県においては、せっかく緒につき始めた「地域型福祉」を後退させず、更に充実させていくために、予算配分を始めどのような具体的施策を講じられたか、まず一点目としてお尋ねします。
2)「障害程度区分」、「市町村審査会」及び「不服審査会」について
障害者自立支援法で自治体に委ねられている事項について、厚生労働省から提示された政令・省令にただ従うというだけでなく、今後施行前から施行後も、自治体は利用者と共に話し合い協力し合っていくという視点が、今後ますます重要になります。
現在進められている国連の障害者権利条約策定会議の場でも、各国共通のスローガンとなりつつある“Nothing about us, without us”「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」という、当事者の切なる願いによる当事者参画は、何より、より良い制度作りに寄与すると認識されています。
さて、障害者自立支援法では、介護保険の要介護度認定と類似した「障害程度区分」が用いられます。そこでは、コンピューターによる一次判定では現れない利用者の心身の状態が反映されるように、「市町村審査会」における二次判定においては、利用者本人の生活実態をよく把握している立場の人の意見が、十分に反映される必要があります。
高齢の方々のそれまでの生活を維持するための家族介護を補うという意味合いが強い介護保険と、これから社会や地域に出て、一人の市民としての生活や家族を作っていこうという、いわば人生の黎明期の方々を対象とした障害者自立支援法とでは、自ずと、必要とされる福祉サービスの種類も量も異なるものです。
したがって、「市町村認定調査員」及び「認定調査員」及び「相談支援専門員」が、より実際の利用者の状態像や、実態に則した判断、アセスメント調査を行えなければなりません。そのためには、障害者ケアマネジメント研修をはじめ、障害者の社会参加、自立生活、地域生活支援、エンパワメント等の内容を含む研修を一層進めることが重要です。その際、講師の中に必ず障害当事者を含めることが必要です。本県で行われてきた障害者ケアマネジメント研修では、障害当事者が講師として参画しており、この点では既に前進しております。
したがって、「市町村審査会」や県が設置する「不服審査会」の委員の選任においても、法の附帯決議にあるように「地域生活とサービス利用について知識と経験がある障害当事者」の選任が望まれます。また、審査請求の審理は、市町村の支給決定基準等を審査基準として判断するとされていますが、障害者の地域生活の実態から審査を行い、地域生活を担保するものという視点が必要です。
障害程度区分と「市町村審査会」のあり方、「不服審査会」のあり方、及び両委員会の委員の選定のあり方についてご所見を伺います。
3)サービス水準維持と負担軽減について
障害者自立支援法の附帯決議にも「“現行のサービス水準の低下を招くことなく”障害保健福祉サービスの基盤整備に関する基本指針を国は策定すること」となっております。支援費制度でようやく生まれつつあった地域移行の芽がつみ取られてしまうことがないよう、4月以降もサービス水準の維持については、国同様県や市町村もその責任を負う中で、工夫して予算を確保する必要があります。
また、利用者の1割負担が導入されるため、生活困窮者への負担軽減が必要です。自治体の取り組みとして、横浜市が低所得者の福祉サービスの自己負担を助成、京都市が福祉サービスの国基準の負担額を独自に半分に軽減、東京都が低所得者の精神通院医療の無料化を継続を決めています。
本県においては、サービス水準の維持および負担軽減について、どのように取り組むのか伺います。
4)障害者自立支援法施行後のモニタリング調査(影響調査)と障害福祉計画について
4月施行の障害者自立支援法の基準単価等が3月に入ってやっと出るという、見切り発車的施行と言わざるを得ない慌ただしさに、県や市町村の混乱は想像以上のものがあるとお察しします。担当の皆さんは、無事スタートさせるために神経をすり減らしておられることに、同情を禁じ得ません。同様に、サービス利用者の場合は、スタートさせるだけでは済まされない状況が日々の生活にのし掛かってきます。
新制度が利用者の現場で、どのような状況を起こし、障害を持つ方々の自立や社会参画にどのような影響を与えるかを、調査・分析し、対策を立てる責任が行政にはあります。そのために、法施行後の速やかなモニタリング調査などをご検討いただきたいと思います。これは、国に対して、制度の不備や自治体への支援を求める基礎ともなります。
また、新法では、新たに障害福祉計画を策定することになりますが、その際、数値目標設定については、何より財源先行の計画にはならないように、まずは適切なニーズ調査を実施し、ニーズに基づいた計画策定が重要であると考えます。策定過程では、各地でタウンミーティングを行うなど、広く県民を巻き込み時間はかかっても、丁寧にニーズ調査を行ってはいかがでしょうか。
また、障害福祉計画の策定委員会では、サービスを利用している当事者の視点も含めたデータ分析、目標設定が行われるよう、単に団体の長が出席するだけではなく、障害者の現実的かつ日常生活のニーズをよく知る障害当事者を、複数名、これまで以上に多く、策定委員に入れる必要があります。
障害者自立支援法施行後のモニタリング調査と障害福祉計画の策定についていかがお考えか伺います。
(健康福祉部長)
(問1)障害者自立支援法について
(1) 地域型福祉に向けての予算について
(2) 「障害程度区分」、「市町村審査会」及び「不服審査会」について
(3) サービス水準維持と負担軽減について
(4) 障害者自立支援法施行後のモニタリング調査と障害福祉計画について
(答弁)(1)地域型福祉に向けての予算についてでありますが、本県では、平成15年に策定した「くまもと障害者プラン」に基づき、地域生活に関する施策の充実に努めており、ホームヘルプやショートステイ、グループホームに関する事業等について、来年度も所要の経費について、平成18年度当初予算案に計上しております。
また今後、障害者自立支援法に基づく制度の詳細が明らかになり次第、改正の内容を十分に把握した上で適切に対応して参ります。
(2)次に「障害者区分」、「市町村審査会」及び「不服審査会」についてでありますが、まず、障害程度区分の導入とその認定を行う市町村審査会の設置、さらには市町村の処分に対する不服を審査する県不服審査会の設置については、サービス支給決定の透明化、明確化を目指した障害者自立支援法上の重要な仕組みであると認識しております。
市町村審査会と県不服審査会の委員は、法律でその用件が定められており、県で設置予定の不服審査会ではその用件を満たす障害当事者の参加もいただきたいと考えております。一方、市町村で設置予定の市町村審査会では、市町村の規模によっては、人材の確保が厳しいことも予想されますが、県としては市町村に対して障害当事者の参加を引き続き働きかけて参ります。
(3)次に、サービス水準維持と負担軽減についてでありますが、今回の新法制定により、介護給付等に要する費用が負担化され、安定的なサービス供給が可能となったこと、また、低所得の方に対して利用者負担の月額上限額の設定等の軽減措置が講じられたことなどについては、一定の評価をしております。
県としては今回の制度改正がなされても現行のサービス水準は確保できるのではないかと考えているが、その影響については、今後とも注意深く見守って参ります。
(4)最後に、モニタリング調査と障害福祉計画についてですが、障害者自立支援法は、3障害に対するサービスの一元化や新事業体系への移行に5年の経過措置が設けられるなど、大きな改革であるので、全体的な評価は、制度がある程度安定するまで待たざるを得ないと考えております。ただ、来年度はサービス基盤の計画的な整備を図るための障害福祉計画を策定する予定であるで、ニーズ調査を行う中で現状の把握に努めて参ります。
また、障害のある方の障害福祉計画策定への参加については、現行の「くまもと障害者プラン」の策定に際しても、障害のある方の参画を得ながら進めており、今回も同様の参画をお願いして参ります。