福祉のまちづくりについて [一般質問(2006年2月)]
1)ハートビル法とやさしいまちづくり条例の施行状況について
耐震構造疑惑問題と時を同じくして、ビジネスホテル「東横イン」の不正改造問題が発覚しました。長年、交通機関や建築物等のバリアフリー化を追求してきた当事者動団体の一員としては、見過ごすことのできない問題として、強い憤りをもって受け止めてきました。この呆れる悪質な事件により、はからずもハートビル法や福祉のまちづくり条例の存在が一般に知られることになり、更に、ハートビル法や福祉のまちづくり条例といったものの弱
点も明らかになる結果ともなりました。こうしたことが起こらないような、更なる法的整備の必要性が広く認識されたものと思います。
さて、ハートビル法は、高齢者・障害者等が使える建物を増やすため、平成6年に制定され、その後平成15年の改正を経て、2000㎡(606坪、2反)以上の特別特定建築物の建築等について利用円滑化基準に適合することが義務付けられました。これにより、ハートビル法で網かけされる大型のスーパーや郊外の映画館等は、確かに使えるようになりました。
更に本県では、ハートビル法と相俟って障害者等の社会参加を進めるため、平成7年に「やさしいまちづくり条例」が制定されました。こちらでは、日常的に利用する小規模の施設や店舗のバリアフリーを更に進めるため、平成16年に見直しが行われ、建築の際の事前協議の対象が300㎡以上に、店舗や飲食店など身近な建物については100㎡以上に引き下げられました。
しかし、事前協議自体は義務化されても、実際に事業主がバリアフリー化に応じることは、小規模な施設では義務でないため、町中では依然として、車いす等で利用できる小規模店舗が増えないという現状もあります。
さて、そんな中の「東横イン事件」でした。あそこまで、ハートビル法どころか建築基準法にも違反するような意図的な不正改造が行われていたケースは、極めて悪質であり珍しいケースであると思われますが、今回の事件によって露呈した、ハートビル法や各地の福祉のまちづくり条例の課題は、再認識されなければなりません。つまり、建築確認の際、ハートビル法や条例を熟知した検査官が、事前協議の内容が反映されているかという点をしっかりチェックできているか、あるいは、その後の運用は適正であるかをチェックしているか、等の課題があります。
幸い、本県の場合、東横インの不正改造は、新市街店の障害者用駐車場の表示違反など比較的軽微なものでしたが、その後実施した、ハートビル法によって利用円滑化、つまりバリアフリーが義務付けられた建築物の立ち入り調査では、悪質な物件は確認されなかったものの、本県、そして熊本市、八代市の建築課の中で、今後の課題が共有化され、取組みが進んでいかなければなりません。
そこで質問ですが、まずハートビル法ややさしいまちづくり条例の基準への適合について、今後どのような体制によりチェックされていくのか、
次に、本県での多数の人が利用するハートビル法の特定建築物の年間の建築確認の件数、及びその内、基準適合義務がある建物の件数、さらにやさしいまちづくり条例による事前協議の件数等はどの様になっているのかお尋ねします。
また、県民は、現在、事前協議に応じられた事業者が、高齢の皆さんや障害を持つ人が使える施設や店舗を作られても、利用するための情報がありません。県のホームページなどの活用はできないか、その点についてもお尋ねします。
2)不正工事防止と条例等推進への利用者参画について
ハートビル法に違反するような不正工事防止と、法や条例に基づく事前協議、建築確認、その後のチェックという段階に、利用者である当事者が参画することで、より身近な店舗のバリアフリー化への理解と実践も進むと思われますが、いかがでしょうか。これから審議される新バリアフリー法案では、高齢者・障害者等の計画段階からの参加が唱われていますが、そのような利用者である当事者とのパートナーシップを、是非本県で実現させるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
以上、土木部長の答弁をお願いいたします。
答弁(土木部長)
(問2)福祉のまちづくりについて
(1) ハートビル法とやさしいまちづくり条例の施行状況について
(2) 不正工事防止と条例等推進への利用者参画について
(答)(1)ハートビル法とやさしいまちづくり条例の施行状況についてでありますが、まず、チェック体制については、先の立入調査の結果、整備基準に一部適合しない施設があり、このことを受け、県においては、今後、チェックリストなどの充実を図り、事前協議、建築確認、完了検査の各段階において適切な審査を行うこととしております。
また、今回の立入調査を踏まえ、問題点及び対応策について、熊本市、八代市及び指定確認検査機関にもお知らせしており、今後も互いに連携し、課題の共有を図りながら、適切な審査が行われるよう努めて参ります。
さらに、建築士や民間事業者等に対し、法の趣旨や基準等に関する研究会を開催するなど、啓発に取り組んでまいります。
次に、多数の人が利用するハートビル法の特定建築物や事前協議の件数についてでありますが、平成16年度の県内の特定建築物は1,785件であり、その内、ハートビル法による基準適合義務がある建物は39件でした。
また、条例による事前協議件数は504件で、その内211件が施設内容に応じた努力義務も含む基準にすべて適合しています。残りの施設については、一部適合しない内容について整備に努めていただくよう働きかけを行っております。
さらに、事前協議適合店舗等の公表については、申請者の了承を得る必要があるなど課題もありますが、やさしいまちづくりを更に県民に広める観点から、具体的な方策について検討を行って参ります。
次に、不正工事防止と条例等推進への利用者参画についてでありますが、本県では、利用しやすい建物づくりのため、これまでも県有施設はもとより、多数の人が利用する商業施設、駅舎等の整備において、計画段階から利用者の意見を聞き、設計や工事に反映させる取組みを積極的に進めてきました。今後、これらの利用者参画で得られた貴重な意見については、広く公開することとしております。
また、バリアフリーの状況等について、建物を利用する中で気付いた点や改善点等について御意見をいただくことは、利用しやすい建物の普及を図る上で、大変有用なことと考えております。
さらに、事前協議や建築確認等における利用者参画については、申請書類には企業活動に関する情報や個人情報等も含まれることから、現段階で導入することは難しいですが、建築主から利用者側の助言を受けたいとの相談があった場合には、関係団体等とも連携し積極的に対応して参ります。
3)障害児学校のバリアフリー状況調査について
本県では平成3年に、県立施設のバリアフリー総点検があり、その後、改修工事が行われています。その際、県立学校も管理棟を中心として改修されましたが、学校全体のバリアフリー化は、その後、障害を持つ生徒が入学するという機会ごとに、対応されてきています。もちろん、過去には、その生徒が卒業する時点でやっと改修が完了するなど、対応がタイムリーでなかったケースもありましたが、最近では、生徒が入学する時点で改修ができているなど、関係者の努力により嬉しいケースも生まれています。
ところが、障害児学校においてはバリアフリーが十分でないという指摘があります。昨今は、児童・生徒の障害が重度化し、重複した障害を持つ子どもが、盲学校、聾学校にさえ入学してきます。養護学校、盲学校、聾学校では、体温調整が十分できない児童・生徒が空調設備が無い教室で学校生活を送るとか、障害者用の設備の無い狭いトイレを使っているなど、施設面でバリアフリーやユニバーサルデザインとはほど遠い環境にいることを強いられているケースがあります。もちろん、現場からの声は県に届いていると思いますが、切実さと深刻さがどの程度伝わっているのかと、現場や保護者からの声が、届いています。
県立学校は、老朽化している施設も多く、更に、耐震工事やアスベスト工事なども行われておりますが、是非、最も弱い子どもたちが安心して学校生活を送れるよう、バリアフリー環境改善に取り組んでいただきたいと思います。そこで、まずは、ユニバーサルデザインの考え方に基づく県立の障害児学校のバリアフリー調査を行っていただきたいと思います。その際、児童・生徒のことをよく知る教職員だけでなく、福祉の視点での理学療法士や作業療法士など、教育委員会以外の方々も加わって調査する必要があると思います。
調査についての、教育長のご認識と前向きな答弁をお願いします。
答弁 教育長
(3)障害児学校のバリアフリー状況調査について
近年、特殊教育諸学校では重度・重複障害のある児童生徒が増加しており、バリアフリー対策は重要な課題であると認識しております。
県教育委員会では、各県立学校からの要望の基に、特に、特殊教育諸学校からの児童生徒の安全や健康にかかわる要望は最優先に取り組んでおり、体温調節のための空調設備の設置やトイレの様式化等、バリアフリー対策を順次進めています。
県教育委員会としては、特殊教育諸学校のバリアフリー対策を更に進めるためには、学校が、児童生徒本人から、また、児童生徒の障害の状況を詳しく把握されている保護者、教職員等から意見を聞き、それを踏まえて対応していくことが最も重要と考えており、まずは、各学校に対し、この趣旨がより徹底するよう指導に努めて参ります。
なお、外部の専門家を交えての全校調査については、まずは、医療機関等に隣接している学校で、当該医療機関等の職員から施設の点検を受けるといった取組みを行なって参ります。
今後とも、バリアフリー対策の推進等、特殊教育諸学校の教育環境の改善に努めて参ります。