障害を持つ人への差別をなくすための条例制定について [一般質問(2006年11月)]
・知的障害者の県機関での雇用について
質問
(平野みどり)
続きまして、障害を持つ人への差別をなくすための条例制定について伺います。
障害を持つ人たちがトラブルに巻き込まれたり権利侵害を受けたりする中で、救済する有効な仕組みがないと指摘されています。特に、障害者自立支援法のもと、生きることすら脅かされている状況が熊本を含め全国各地で報告されている中、有効な法整備が望まれます。
例えば、障害を持つ児童の場合は児童虐待防止法、障害を持つ女性の場合はDV防止法などが場合によっては適用されますが、世界に目を向ければ、実に50カ国以上で、障害者法などに差別禁止規定を設けています。
そんな中、千葉県では、9月定例県議会で、障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例が可決されました。可決されるまでには、議会でも紆余曲折があったようですが、一定の妥協点を探りながらも救済する仕組みが自治体レベルでできたことは画期的なことです。
そもそも、何が差別に当たり、何が差別に当たらないのか、差別を受ける側と差別をしてしまう側とで一致した認識にはなりづらいわけですが、千葉県のこの条例で最も重要なのは、それを判断する物差しをつくったということです。つまり、教育、労働、地域生活、移動など、生活分野ごとに類型化し、具体的にだれにもわかりやすく書きあらわされています。
何が差別なのかという入り口の部分と、出口としての救済の仕組みの双方がなくては実効性のある条例とはなりません。ちなみに、千葉県の条例では罰則はつけられておらず、罰則よりむしろ調整の仕組みをつくることにより、実態として差別をなくす取り組みが行われます。
また、千葉県の条例では、障害を理由にした異なる取り扱いや必要な配慮をしないことも差別であるとしました。これは障害者権利条約でも認められたグローバルスタンダードであり、条例に盛り込んだことは意義が大きいと言えます。
さて、差別問題は、障害者だけに起こるわけではありません。本県では、水俣病やハンセン病患者の皆さんへのあからさまな差別事例も報告されています。国は、あらゆる差別を包含する中で人権擁護法の制定を視野に入れており、自治体での条例も、この後に進めるべきではという考えもあります。
しかし、各地のまちづくり条例がハートビル法や交通バリアフリー法の後押しをしたように、あるいは、本県で言えば、公害条例が公害立法を実現してきたように、地域のニーズや実態に即した条例先行型の事例は数々あり、住民の利益につながるこれらの条例が違法に当たるとは言えません。むしろ、さまざまな障害者差別や人権侵害が発生している中、自治体は、この状況を放置していいのかという問題を今こそ強く認識する必要があるのではないでしょうか。
本年8月に、国連において、前述の障害者権利条約が115カ国の中で基本合意に達しました。私も、NGOの一員としてその場におりました。12月13日に開かれる国連総会では、いよいよこの条約は採択される予定です。その後我が国も批准の見通しですが、国内の障害者関連法は、障害者権利条約に抵触する部分もあり、今後法改正等が必要になってきます。
そんな世界情勢を視野に入れつつ、国と自治体が今何をすべきなのか、本県も腰を落ちつけて取り組むべき時期に来ています。千葉県では、各地で大小さまざまなタウンミーティングを集中して実施し、そこには、障害者のみならず多くの県民が参加しました。そして、可能な限り堂本知事自身も参加され、直接皆さんの話を聞かれたそうです。その中で語られた差別事例を整理し、条例づくりに反映させてきた試みは注目すべき点です。
熊本県においても、千葉県条例をさらに一歩も二歩も進めた取り組みをすることが、多くの障害を持つ当事者や家族、関係者、支援者が大きな関心を持って見守っている点です。もちろん取り組みの中に入って責任の一端を担っていくことも望んでいます。
障害を持つ人も持たない人もともに暮らしやすい熊本県をつくるための条例づくりについて、健康福祉部長に、前向きな御答弁をお願いいたします。
続きまして、総務部長に、知的障害者の県機関での雇用についてもあわせてお伺いいたします。
障害者雇用促進法により、民間の場合、法定雇用率1.8%達成が義務づけられており、身体障害のある人たちの雇用については、厳しい中にも改善されてきました。しかし、知的障害のある人たちについては、障害の程度が理解されにくいため、身体障害者に比べ雇用環境はさらに厳しく、法整備から10年近くたった現在までほとんど改善されていません。
さて、本県においては、障害者雇用特別枠により身体障害のある職員が雇用されています。そのため、法定雇用率2.1%は達成されています。しかし、民間には知的障害者雇用の促進を求めながら、残念ながら県自体での雇用の取り組みはありません。特に、ことしから施行されている障害者自立支援法が就労支援を促す法律であることから、民間にだけ努力を課すのではなく、県としても取り組みをスタートさせる重要な時期にあると考えます。
もちろん、一気に正規雇用は難しいと思われますので、まずは県庁あるいは出先の県機関で、知的障害を持つ人の雇用につながる業務はないかなど、全庁的な洗い出しが必要ではないでしょうか。例えば、事務の補助から図書の整理、酪農や農業など、どのような業務に就業可能なのかを、本人の適性と意向を丁寧に聞きながら把握していく必要があります。例えば、インターンシップなどの実習で受け入れながら見きわめ、まず臨時職員からスタートさせ、いずれは正規雇用につなげるなど、段階的に広げていくことも可能です。
今後の取り組みについて、総務部長に伺います。以上2点についてよろしくお願いいたします。
答弁
健康福祉部長(岩下直昭君)
障害を持つ人への差別をなくすための条例の制定についてでございますが、県におきましては、すべての人がともに社会の構成員として暮らしていける共生の考え方に基づきまして、県の障害者に係る基本計画でございますくまもと障害者プランに障害者の完全参加と平等という基本目標を掲げまして、その実現に向けた取り組みを総合的に推進しているところでございます。
障害のある方の地域生活を支援し、社会参加を進める上では、差別や偏見をなくし、正しい理解を広めていくことが必要であるというふうに考えております。そこで県では、年間を通じましてさまざまな団体への出前講座等を行っておりまして、また、毎年12月の障害者週間の前後には、くまもとハートウイークを実施し、障害のある方の詩や絵画などを展示するハート展の開催など、幅広い啓発活動を行っておるところでございます。また、障害者関係団体との意見交換会等も定期的に行いまして、障害者施策の課題そしてニーズ、これらの把握に努めているところでございます。
障害のある方の権利を守っていくには、人権啓発についての継続的な取り組みにあわせまして、人権侵害によりまして被害を受けた方々に対する施策も重要であると認識いたしておりまして、これにつきましては、障害者110番事業等での相談事業を中心に対応させていただいておるところでございます。
なお、県において条例を制定するとした場合、国との役割分担や県域を越えます広域的な差別事象にどう対応するかなど、整理すべき課題があるというふうに考えております。県としましては、今後、千葉県条例の制定のプロセス、それから運用の状況、これをしっかり勉強していきますとともに、条約批准後の国内法の整備状況、これも見きわめながら、どのような取り組みが障害のある方の権利を守っていくために最適であるか、これも含めまして、幅広く研究してまいりたいというふうに考えております。
総務部長(原田正一君)
知的障害者の県機関での雇用についてのお尋ねでございました。
本県におきます本年度の障害者雇用率、これは2.61%となっておりまして、法定雇用率の2.1%を上回り、全国都道府県中第7位と上位に位置しているところでございます。しかしながら、障害の種別で申しますと、そのほとんどが身体障害者という実態でございます。
そこで、知的障害者の雇用につきましては、これまで、先行自治体の調査を行うなど、業務内容及び雇用に関する情報や諸課題の把握に努めてきております。現在、庁内の関係部署が集まって具体的な課題等の整理を進めている段階でございまして、今後、知的障害者に適応した業務内容あるいは雇用のあり方等の研究をさらに進めてまいりたいと考えております。
(平野みどり)
条例についてでございますけれども、千葉県が先進的に取り組んだということで、あそこは堂本知事以外の県議会の様子というのは、自民党の皆さんが大変たくさんいらっしゃって、なかなか条例が採択されるかどうかという部分は難しい状況があったそうですけれども、やはり障害者自立支援法がこれだけ悲惨な状況を生んでいる中、自民党の皆さんも、やはりこの条例を否定するわけにはいかないという思いになられたのだと思います。ですから私は、今こそがタイミングとしてはとてもいいのだというふうに思うわけです。
今回の国連での条約でございますけれども、この中で、文部科学省は踏み出しまして、原則分離、いわゆる障害を持つ人は養護学校、そしてそうでない人が普通の学校という、いわゆる原則分離の方向転換をしまして、原則統合といたしました。昨今の特別支援教育の流れは、その中にももちろんあるのでしょうけれども、これだけ踏み込んでおりますので、特に教育の現場では、さまざまな、今でも差別事例ですとか不都合があっておりますので、声があるものだと思います。
部長がおっしゃいましたハートウイーク、ハート展、こういった取り組みももちろんいいわけですけれども、そして団体から意見を聴取されることもいいのですが、本当に一人一人の個人の皆さんが、ここにいて声を出したいとか、その方はおっしゃれなくても周りの方たちから、こういう状況があるよということが伝えられるようなタウンミーティング、本当に小さな規模、それこそ、見せていただいたんですが、20人から何百人の規模で、そういったタウンミーティングを重ねてこられているんですね、千葉県は。そういった取り組みが今から必要ではないのかなというふうに思っておりますので、ぜひとも今後、国に先んじて、いろいろ進めていただけるようにお願いをしたいなと思います。
何よりもこの条例で――私たちはやはり、私の障害以外の方たちでも、何が差別なのかそうでないのかわかりづらい部分がありますが、そういった事例を積み重ねる中でカタログのような形ができているわけです。それがとても重要だと思いますので、よろしくお願いします。
さらに加えますと、熊本の東俊裕弁護士、これは私たちの団体の代表でもございますが、この人が、国の政府団の一員としてこの条約づくりに一生懸命取り組んでもらいました。世界、日本で活躍しているこういった弁護士さんがおられますので、県職員や県教委の研修でぜひ活用していただきますように心からお願いいたします。
さらに、知的障害者の雇用に関してですが、きょうはひのくに養護学校の生徒の保護者の皆さんもおいでだと思います。ぜひともここに穴をあけてほしいという思いがあるとおっしゃっておりますが、県教委にも働ける場がないかということを検証していただきたいと思います。農業高校ですとか、そういうところの実習等で働ける場もあるかなと思いますので、ぜひとも県教委にも検証をお願いしたいと思います。
ちなみに、他県では、愛知県が11月6日から職場体験のインターンシップを始めています。こういった取り組みもぜひ参考にしていただきながら、取り組みを急いでいただきたいと思っております。