水俣病問題について [代表質問(2009年2月)]
質問
(平野みどり)
一昨日与党PTから示された水俣病被害者の救済及び水俣病問題の最終解決に関する特別措置法案を受けて、昨日は県議会水俣病対策特別委員会が開かれました。私も傍聴いたしましたが、本委員会では、被害者救済と原因企業チッソ分社化の2つの事柄が同じ法案の中に盛り込んであることを強く懸念する発言が相次いでいました。分社化より被害者救済がまず優先されるべきという県議会の意思は、これまで与党PTにも伝えられていたはずですが、今回の法案には反映されておらず、このまま国会に提出されることを大変憂慮しております。
そもそも、被害者の多くが高齢化していき、時間との闘いである中、加害企業チッソは、できるだけ迅速に、最後の1人まで救済するという責任遂行に正面から取り組むという姿勢を見せるべきですが、一向に真摯な姿勢が見られませんでした。そのことを苦々しく思い、いら立ちを感じてきたのは私だけではないはずです。
しかし、与党PTは、そんなチッソの長年の悲願であった分社化を、被害者救済策と抱き合わせて認めようとしています。これではチッソ救済であり、被害者が切り捨てられる法案になってしまいます。このような法案で、被害者の皆さんや私たち県民の懸念を、どう払拭できるというのでしょうか。
分社化されると、最終的には原因企業が事実上消滅することになり、補償や公的債務の返済に充てるだけの株式売却益を確保できない場合、救済が滞るおそれがあります。
また、法案の分社化に関する条項においては、法人税、登録免許税、不動産取得税などにかかわる特例措置等、かなり手厚い配慮が含まれており、被害者救済どころか、チッソをとことん救済する法案となっています。百歩譲って、分社化についての議論は妨げないまでも、分社化についての法案は切り離して、被害者救済策は単独の法案として提出されるべきであると考えます。
その上で、救済法案を策定するに当たり、基本に置かなければならないのは、 2004年のチッソ水俣病関西訴訟の最高裁判決です。与党PTによる救済法が、我が国の司法の最高機関である最高裁判断を一顧だにせず、95年の政治決着に漏れた人の救済というスタンスから進んでいないのはゆゆしき問題だと、改めて指摘しなければなりません。万が一、司法救済を求めている人々が政治決着に移ることを考えようと思っても、最高裁判断に基づかない救済策であれば難しいと思われます。
また、救済法の中の救済措置についてですが、与野党が歩み寄りながら着地点を見出そうとしても、補償額は95年より大きく下回るべきではなく、与党案の一時金150万円では合意は見出せないと考えます。さらに、障害や病状がかなり重篤である被害者もおられることから、一律にこだわらず、一部の方には特例措置も必要であると考えます。
国会審議が今後進んでいく中、予断は許しませんが、知事におかれましては、チッソ、国、与党に目線を置くのではなく、あくまでも被害者に目線を置き、最後の一人まで被害者を救うという毅然とした姿勢を貫いていただきたいと思います。法案による県への負担だけを心配するのではなく、県も加害者側の一員であり、責任を持つ地元自治体であるという自覚をさらに深め、今後も臨んでいただきたい、そして発言にも慎重を期していただきたいと思います。
最後に、県は、2007年4月6日から8月末に、水俣病被害者実態調査を行いましたが、国はこれまでのところ、この調査をさらに地域を広げて取り組もうとしていません。被害者数、病状が把握できなければ、救済額がどの程度になるのかも正確に試算できないはずであり、この調査は被害者救済の大前提であると考えます。国に引き続き強く実態調査を求めていただきたいと思います。
以上のような懸念を踏まえ、水俣病被害者救済に関する特別措置法案についての知事の御見解と今後の進め方について伺います。
答弁
知事(蒲島郁夫君)
水俣病被害者の救済等に関する特別措置法案に関する見解についてでありますが、まず、この法案の意義として、水俣病被害者を救済されるという点など、救済について法律上の位置づけが与えられたことは極めて大きいと考えています。
平野議員から、救済策法案と分社化法案は切り離して提出されるべきであるとの御意見がございました。この点については、救済策の財源として、株式譲渡の譲渡益を前提としていること、また、そのため課税の特例を設ける必要があることなど、実務上一括法にせざるを得ない事情があると聞いております。
今回の法案と最高裁判決との関係につきましては、判決以来4年以上が経過し膠着状況であること、また、水俣病の公式確認以来50年が経過し、被害者の方々が高齢化していることから、被害者救済の早期実現を優先する判断が行われた結果であると考えております。
一時金などについても御意見がございました。与党プロジェクトチームで示された金額が基本になるとは思いますけれども、法案では明記されておりません。金額については、今後与野党間でも協議が行われるものと思います。
私の政治理念の根本は、県民幸福量の最大化であり、水俣病問題においては、何をおいても被害者救済の優先であります。そのため、昨年4月、知事に就任してから、水俣病問題の関係者の中で、私が真っ先に面会したのは被害者団体の皆さんでした。その中には政治救済に反対の立場の方々もいらっしゃいました。私は、これまでも、そしてこれからも、被害者の目線で水俣病問題に取り組んでまいります。
被害の実態調査につきましては、有効な手段を見出す必要があり、実施するとしてもそれだけで数年を要するものであります。まずは、被害者救済が最優先であると考えております。
次に、今後の進め方については、午前の西岡議員の質問にもお答えしましたけれども、救済策の実現には、与野党間の協議を初め、まだ越えなければならない課題が残されています。しかし、その機運が熟しつつあるこの機を逃すことなく、被害者の方々の早期救済を実現していくことが最も重要であります。
そのため、私みずからも、県議会と一体となって、国の関係機関と連携しながら、救済策の実現に向けて、引き続き精いっぱい努力してまいります。
(平野みどり)
私は、今回の一連の動き――昨年度は、私も水俣病対策特別委員会に所属しておりましたけれども、なかなか前に進まないなと思う思いはありました。ただ、今回の解決策を見てみますと、最終解決という言葉があるわけですけれども、とにかくチッソは分社化して水俣病から足を洗い、そして、今後どんな形で救済策を求めてこられる方がいらっしゃっても知らないということに逃げ込もうとしているとしか私には思えません。
ですから、知事におかれましては、この水俣病の問題に関しては、チッソと同時に県にも大きな責任があるということを自覚していただきながら、この救済法案、与野党の間で今後審議をされていくと思いますけれども、多くの方が納得のいくような着地点をぜひ見出していただきたいと思いますし、先ほど質問させていただきました実態調査に関しては、同時並行でもできるはずです。救済策が先で実態把握は後だというのは、理屈が通らないと思います。
あえて再答弁は求めませんが、実態調査が数年かかるから後回しだというようなことだけはおっしゃらないでいただきたいなと。積極的に取り組んでいただくようにお願いいたします。でないと、この被害の実態が最終的につかめません。幾ら救済額が要るのか、賠償額が要るのかということもつかめないのではないでしょうか。今後も引き続き議論をしていきたいというふうに思います。