UDは一日にしてならず [みどり日記]
今週の月曜日、雨雲が迫り蒸し暑い中、私が所属するヒューマンネットワーク熊本のバリアフリー担当の澤田新一さん、バリアフリーデザイン研究会の白木事務局長(建築士)、そして私は、新幹線新八代駅の工事現場に向かった。駅舎のチェックを行うためだ。
私たちや視覚障害者団体や聴覚障害者団体は、これまで5,6回、新八代駅と新水俣駅の駅舎や周辺のバリアフリー化、UD化のための協議に参加してきた。行政側である熊本県、八代市、水俣市、そしてJRと鉄建公団も意見を聞く側として参加してきた。特に、熊本県はUDやパートナーシップによる、UD推進の立場であり、担当者も調整役として、主体的に取り組んできている。
このコーナーでかつて報告したが、新八代駅や新水俣駅については、基本設計がUDやパートナーシップが打ち出される前から出来ていたため、基本構造の変更は不可能であった。たとえば、諸外国や首都圏などの駅舎では、改札レベルからホームにつながるエレベーターは、透明の特殊ガラスで作られていることが多くなった。これにより、エレベーターの向こう側の様子もわかるし、何よりエレベーター内部で何が起こっているかが誰にもわかるので治安上も安全だ。しかし、既にエレベーターは発注していて変更不可だったので、従来のものだ。
だとすれば、せめてエレベーター内部のボタンの高さや場所だけでも、使い勝手がいいものをと思ったが、「ボタン位置を1mとした(誰がした?) “UD対応”のエレベーターだから大丈夫」とメーカーも鉄建公団も思いこんだ結果、仕様の丁寧なチェックがなされず、1mの位置になった。筋ジストロフィー等で手が上がらない人にとっては、1mは高すぎる。せめて85cmくらいでなければと言う。今後は、メーカーの“UD対応”という言葉を鵜呑みにせず、利用者に直接確認することが必要だということを、皆が理解できたと思う。
一方、多目的トイレについては、鉄建公団も思い切って、実際のトイレスペースと同じ大きさのモジュールを造り、その中で私たちが確認しながら、便器やおむつ替え台、手洗い器、手すり、ペーパーホルダー、緊急ボタンなど、大きさや位置などそれぞれ細かく意見を出すことができた。これにより、完成したトイレは限られた条件の中では、かなり完成度が高いものとなり、今回のチェックでも八代市在住の当事者の皆さんから評価が高かった。つまり、こういったチェックを何度も行っている利用者の関与がどれだけあったかが、成否を決めると言っても過言ではない。
また、昨日の熊日新聞でも、県営木庭坊団地の建て替えが完成したと報道されていたが、これもまた、私たち当事者が、何度もチェックを行った結果、意見が取り入れられた点も多い。県の担当者は、車いすの私のニーズが反映された、白木力さん設計の我が家も訪問した。そのときも、浴室は3枚引き戸で、開口部をできるだけ大きく確保すべきだと指摘し、それが木庭坊団地にも採用されていた。
UDとは、これまで述べてきたように、多くの人たちが構想・計画段階から関与し、様々なニーズをデザインに反映させていくプロセスこそが神髄だ。熊本でのバリアフリーデザインの展開も、常にそのことを大事にしてきた。要するに、言葉の問題ではなく、パートナーシップを基本に、関係団体・個人がいかに建設的に意見を交えてよりよいデザインを目指すかだ。今後のUDに関する報道も、そのプロセスはどうだったのかを丁寧に伝える視点を大事にして欲しい。 “UDはお上からの施しにあらず、UDは一日にしてならず“だ。