”人”が育つデンマークの教育 [みどり日記]
背筋が寒くなるような子どもをめぐる陰惨な事件が続いている。下校時に寄り道すらできなくないほど、より弱い者への攻撃が、今やいつどこで起こるかわからない。困った時代になったものだ。このような犯罪を繰り返す“異常な人たち”を生んできた社会を、抜本的に見直していかなくては、子ども受難・社会的弱者受難の問題は今後も続くだろう。日本の教育は、優生思想や排除の論理の刷り込みを行ない、勝ち組・負け組の仕分けをしてきたと言えないだろうか。自己肯定感を持てない子どもを、早い年齢から生んできていないだろうか。自分自身を認め、大切に思いえない子どもに、他人を大切にというメッセージは定着していかない。そして彼らは大人になっていく。
そんな中、3日にデンマーク在住の小島ブンゴード孝子さんを招いて講演会を行った。12月に入って最初の土曜日の夜でしかも1000円という有料だったにもかかわらず、200人もの方たちが参加してくださった。しかも、小島さんのわかりやすい話に、多くの皆さんが「来てよかった」と喜んでおられた。実行委員会のメンバーは、胸を撫で下ろした。
小島さんは、今回、既に全国20ヶ所でお話をしておられる。テーマはさまざまだが、特に、福祉や教育についての話の引き合いが多いそうだ。デンマークでは小学校から大学まで授業料は無料だ。大学院にだって無料で行ける。どんな家庭に生まれた子どもでも、必要な教育を十分受けられ、可能性を無限に広げられるデンマークの人々をうらやましく思う。所得税50%、消費税25%だから実現できるのだろうが、これだけの保障が約束されているのなら決して悪くない。もちろん福祉サービスも同様だ。
今回の講演は、「女性が生きるということ~福祉の国デンマークに暮らして」というテーマだったが、女性も男性も共に働き、子育てをし、教育費に悩んだり、介護に悩んだりしなくていい社会でなくては、女性もいきいきと生きられないのは自明の理だ。幾多の戦争被害を通じて、デンマークは“人”を財産と考え、教育に税金を投入してきた。職業高校に進むことと、大学進学のため普通高に進むことが対等であり、単なる選択の違いである社会を、日本ももう一度目指していくべきではないだろうか。
詰め込み過ぎ、点数至上主義では人材は育たない。小島さんは、彼女の長女のエピソードを語ってくれた。
「長女が5年生の時、一生懸命“九九の表”を見ながら、覚えようとしていたので、愕然としました。日本の教育を受けて育った私は、デンマークの教育で大丈夫だろうかと不安になりました。ところが、その年に、お客としてアメリカから大学の先生が我が家に来たのですが、その人に長女が、おぼつかない英語(第二外国語)で一生懸命、『子どもに出来る世界平和の活動』を説明していました。その姿を見て、『なんて私はおろかだったのだろう。デンマークの教育ってやはりすごい』と改めて思い直したのです」
殺伐とした日本になってしまった今、私たちは「生きる力をつける教育、あるいは人間の持っている可能性を引き出す教育」を、今こそ北欧に学ぶ必要があるようだ。小島さんは年に一回は帰日されているようなので、また熊本にお呼びして、別のテーマで話していただこうと思う。