障害者の生活と命を直撃する自立支援法
熊本は、今日やっと梅雨明けした。蝉の鳴き声が響き渡り、朝から気温もウナギ上りで、本格的な夏の到来だ。それにしても7月の始めには、梅雨が来ないで一気に夏かと思ったほどだったが、その後は激しい雨が長く続いた。今回の雨により、3年連続で3階まで浸水した芦北町告地区を始め、深刻な被害を受けられた方々には、心からお見舞申し上げるとともに、迅速な復旧と抜本的な対策が進むよう、県にも働きかけていきたい。
さて、先週DPI日本会議の役員会に、久しぶりに参加したわけだが、ここでは、来年のDPI世界大会がソウルでの開催となり、来年に向けて、これまでも交流してきた韓国DPIを支援していくことなどが確認された。しかし、何と言っても今回は、4月にスタートした「障害者自立支援法」の10月本格施行に向けての取り組みについて、時間の多くが割かれた。
私は、この自立支援法の理念は、基本的に大きく間違っているとは思わない。つまり、戦後長く続いてきた入所型福祉から、地域生活の実現を意図しているからだ。しかしながら、これまでいち早く地域を意識して頑張ってきた通所授産施設や作業所までも、一緒くたにして、一気に追いつめてしまっている現状からは、施行があまりに拙速で思慮が浅かったと言わざるを得ない。事業を縮小したり、作業所を閉鎖したりしなければならないケースも報告されているし、地域での基盤整備があまりに不十分な状況の中、自立生活や地域移行への準備もなされないまま、既に入所施設から地域に移行した(させられた)ケースもある。
また、負担という点で、自立支援法では、障害者福祉サービスの利用料が、個々の負担能力に拘わらず一律に(定率負担・応益負担)徴収されるという仕組みに変わった。たとえば、低所得と認定をされる人(月収が、年金のみの約82,000円程度の人)でも、福祉サービス利用料は最大で24,600円という高額で、現実離れした利用者負担を強いられている。
作業所等で働く人たちの場合も、平均的な給料が10,000円前後であるにもかかわらず、そこに通って仕事をすることが福祉サービスの「益」を受けているとみなされ、その給料を超える額(その人によって異なるが、例えば平日毎日通勤すれば約35,000円といった給料を超える額)を利用料として徴収される。『仕事をしたために、お金がなくなった』という信じ難い状況を生み出している。6月にDPI日本会議が行った緊急アンケートの結果を見ても、負担が増えたと回答した人は、なんと75%に上っている。
http://www.dpi-japan.org/shiennhi-tyousakekka.doc
このような事態を多くの福祉関係者は当初から予想していたが、現実は厚労省の予測を上回っているのではないか。もし、織り込み済みだとするならば、なんという拙速で非情なやり方だろう。厚労省の障害保健福祉のキャリアOBの中には、現担当局が進めた障害者自立支援法に、大いに憤慨している人もいると聞く。
そんな中、国の進め方では障害者の生活と命は守れないと、全国の都府県及び市区の約15%で、何らかの利用者負担に関する独自の軽減措置がなされている。利用者負担を決めた厚労省には憤りを感じるが、諸悪の根源はと言えば、そこに圧力をかけ続けた財務省であり、現「小泉政権」であることは間違いない。地方自治体には、国に改善を強く働きかけるとともに、当面は住民の視点で独自に措置を講じてもらうしかない。そして、支援費制度から大きく転換した同法の施行により、自治体がどんなに混乱し多忙化を極めているかも強く訴えてもらいたい。この夏は、あらためてそんな情報を収集しながら、運動を強化していくこととなる。
まだ措置を講じていない熊本県と熊本県内の自治体だが、状況を打開しようと、6月に「自立支援法の利用者負担軽減を求める会」が立ち上がり、署名活動が展開されている。これは、中核市である熊本市と県内の自治体を支援する立場の熊本県に対して、負担軽減措置を講じる要求をするための署名活動で、9月上旬に、熊本市に対しては署名と要望書を、熊本県には要望書を提出する予定だ。現在、署名活動は毎週土曜日に、上通りか下通りで2時から4時まで行っているが、新聞やテレビ報道あるいは周囲のサービス利用者の声により、厳しい現状が伝わってきているのか、自ら寄ってきて署名をしてくださる方も多い。既に1万人分の署名が集まっている。
今回の署名活動の特徴としては、障害者団体、施設、事業所、保護者、支援者など、「思想信条や政党の支持や立場を超えて、共闘できている」ことだ。それだけ事態が、極めて深刻であり、障害のある人たちの地域生活の継続の可否がかかっているという認識からだ。既に、福岡県では、母親による障害を持つ娘の殺人事件が起こってしまったが、障害者自立支援法の拙速な施行との関連があるようだ。人を殺すなどということは、親子関係であっても、決してあってはならないことだが、今のままでは、このような悲劇が再び発生しないと誰が言えるだろうか。下記に、この事件と支援法に関する西日本新聞の社説を紹介する。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syasetu/20060721/20060721_001.shtml
さて、「自立支援法に対する利用者負担軽減を求める会」では、4月の同法の施行後、障害を持つ人たちの生活がどう変わってきているかを訴える集会を下記の通り開催する予定だ。多くの皆さんに、直接、障害を持つ仲間たち、家族、施設関係者の声をお聞きいただき、署名の更なる拡大にご協力いただきたい。
『自立支援法に対する利用者負担軽減を求める大集会』のご案内
日時:8月12日(土)14:00~16:00
会場:県民交流館 パレアホール(10階)
参加費:無料
<内容>
①取り組みについての基調報告
障害者自立支援法利用者負担軽減を求める会
代表 東俊裕
②リレートーク「それぞれの立場からの訴え」
・ホームヘルパーを利用する立場から
・通所施設に通う立場から
・入所施設を利用する立場から
・精神障害者の立場から
・重度の障害を持つ親の立場から
・ヘルパー事業者としての立場から
・通所施設事業者としての立場から
・入所施設事業者としての立場から