2日間の現地視察だけでは限界がある(有識者会議) [みどり日記]
今年は親代わりだった祖母の初盆のため、12日、13日と週末は身動きがとれなかった。川辺川ダム有識者会議の現地調査が行われていた球磨川、川辺川流域のことが気になっていたが、友人らの報告や報道で確認している。
4回までの有識者会議は、実物を見ずに論議されていたので、委員の方々はかなり無理を感じておられたと思う。今回、流域を辿りながら、あらたな視点で考えていただくきっかけとなったことだろう。もちろん、同じ物を見、説明を聞き、推進・反対の双方の主張を聞いても、各委員の治水に関する見解は一致はしないと思うが、これまで幾度も水害を経験した流域住民の65%が、やはり「川辺川ダムは要らない」と今春の知事選でのマスコミの世論調査に答えている事実を、重く受け止めていただきたい。人吉、相良村の首長以外の、当日出席していた流域自治体の首長たちですら、本音と公式な立場での見解が必ずしも一致ではないということにも、思いを巡らせる必要がある。
球磨川・川辺川の美しさと将来的な潜在力については、皆さん評価してくださったものと思うが、地域のコミュニティーを崩壊させてきたこれまでの対立の中の事情などが、果たしてどの程度まで委員の皆さんの理解につながっているのかを考えると、複雑な思いがする。ましてや、4回の会議に参加していた他の委員と異なり、今回たった一回きり参加したオランダ人アドバイザー、ディック・デ・ブラウン氏の発言には首をかしげたくなる。
熊日新聞によれば、「人吉市の人々が流域に住み続けたいと考えるならばダムは必要。従来計画の場所、規模のダムが最適だ」と、ダムを肯定する見解を示したようだ。 世界の水害地域や治水対策などをどれだけ見てこられたかは知らないが、1,2日の視察で、しかも彼に付き添っていた県や推進派(国)の説明がほとんどだと思われる中、断定的であまりにナイーブ(稚拙)な見解は甚だ迷惑だ。
そもそも、海抜0m以下のオランダの専門家をわざわざ呼ぶこと自体に無理や不安を感じていた。恐らく、事前に英語に訳された推進側の資料が、彼の元には届いていたのだろう。地域の実情や歴史、双方の意見が対等にインプットされたとはいえない状況で見解を求めるとこうなるという典型だ。
また、ダム建設には予定地がよいと発言しておられるということだが、まだ記憶に新しい四川大地震級の地震が、日本のどこででも起こることを認識し、建設予定地がシラス台地の脆い地層であることなどを知っていれば、そんな見解はあり得ない。見た目だけでダムに適した場所とされたのではたまらない。あの地震でどれほど日本に住む私たちは、人工的構造物が自然災害によって、更に巨大な危険構造物に化すことを現実感を持って想像できるようになった。
ブラウン氏は、有識者会議の中立性を担保するためのアドバイザーという位置づけのようだが、果たして中立と言えるだろうか。そもそも、アドバイザーが見解を言うべきなのか。蒲島知事には、くれぐれも、他の委員たちとは費やした時間による球磨川・川辺川への思いに隔たりがあるブラウン氏の見解を過大に扱わないでいただきたい。9月の最終判断まで、有識者会議はもちろん、更にもっと流域の声に向き合っていただきたい。