貧困層を生み出した政治の責任
年末年始、派遣切りに遭った人たちへの日比谷公園での炊き出し風景が、繰り返し報道されていた。支援の中心にいたのは、「反貧困」で大佛次郎受賞したNPO法人自立生活サポートセンター・もやいの代表、湯浅誠さんだった。23日、八代市で行われた湯浅さんの講演会に参加した。時の人の話を聞こうという人で、ハーモニーホールの会場は満席となっていた。
湯浅さんたちが行った、ホームレスなど貧困状態にある人たちへの年越しの「支援村」は、官庁や国会にも近い日比谷公園で行うことで、貧困層を作ってしまった政治の無策へのアピールという意味もあったのだろう。当初は、「炊き出しの準備はしたものの、それだけ人がくるだろうか」と思っていたそうだが、蓋を開けてみてびっくり。世界不況の影響だとして、自動車や半導体関連など大手メーカーが派遣労働者を年末にバサバサと解雇したことと、支援村の活動が報道されたこととのタイミングが合って、日々人が増えてあふれ出し、テントが足りないほどになった。「これは寒空の中大変だ」ということになり、湯浅さんは、パイプのある与野党の国会議員たちに電話をし、結局、厚労省も凍死者でも出たらまずいと思ったのか、官庁が始まるまでということで講堂を開放することになったそうだ。
小泉政権以降、非人道的な法律「労働者派遣法」などが、急激に貧困層を生み出してきた。私の周りでも、教育も受け実力もある若者が、非定期雇用のワーキングプア状態で年を重ねていくというケースの話をよく聞く。当然、彼らは将来への具体的展望が描きづらそうだ。そんな人たちが大量に解雇されていた。
さて、今回の支援村には、全国から金品で相当の支援が届いたそうだ。あまりに悲惨な現状に、わずかばかりでもと支援を申し出た人も多かったと思う。(中にはリンゴ1トンの支援も!)弱い立場の人たちへの温かい視線も注がれる一方、「甘えている」との心ないネットでの中傷もあったとか。でも湯浅さんは、弱い人を攻撃して喜ぶ弱い人はいると意にかえさない。
質疑の際、会場のホームレス支援の活動をしている方から、地元の生活保護担当行政が冷たいとの批判の意見もあった。湯浅さんも同じ経験をしてきた。確かに、保護はできるだけ出さない、保護は切らせるものという考えに支配されている窓口行政の一面もある。しかし湯浅さんは、そもそもは生活保護でなくては生きていけない人たちを産み出してきた国の政策が間違っていたことの結果で、その対応をさせられている保護行政の職員自身も心身とも疲弊しきっていると指摘していた。
現在、労働者の世代間での技術の継承やセルフ・エスティーム(自己尊重)の保持は、危機的状況にある。間違いなく、労働のあり方を遡って考え直すべき時だ。そして、必要なら生活保護は活用すべきだと湯浅さんは言う。「私が支援してきた人たちは、『自分のことは自分でがんばれ、他人に迷惑をかけるな』という社会のメッセージに追いつめられ、潰されそうになっている人たち」とも。闇雲に、あるいは非合理的に“頑張らせない”教育や福祉へのシフトにも共通する大事な視点だ。折しも湯浅さんの講演から2日後、25日には「一緒に考えよう!障害のある子どもの福祉~がんばりすぎない子育て、かんばらせない社会を!」という表題の学習会に参加し、保護者、専門家、行政、NPOなどの方々から、現状と課題についてお話しを伺った。
定額給付金の2兆円あったら、一過性の消費ではなく、もっと未来につながる労働・教育・福祉の仕組み作りに、地方の実情にあったやり方で有効に活用できるのにと、返す返すも腹立たしく思いながら帰路についた。