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引き継ぎたい男女共同参画への思い [みどり日記]

18日、19日、20日と三日間、DPI日本会議の理事会等のため上京していた。障害者権利条約批准への政府、省庁、政党の動きなど最新情勢、まだ課題が山積している障害者自立支援法への対応等、事務局から報告があった。もちろん、オフレコ情報も多く、詳細を書くことはできないが、いつもながら、DPI日本会議のメンバーが運動のフロントラインで動き、影響力を持っていることを実感する。同時に、過去はどうあれ、今は共産党系から自民党系まで、多くの障害者団体・家族団体が統一して、同じベクトルで取り組んでいることの意義は大きい。

6月13日、14日には函館でDPIの総会が予定されており、基調講演「排除しない社会へのビジョン~生活保障の再構築」(北海道大学の宮本太郎教授)に続くシンポジウムに参加することになっている。今のうちに、障害者の視点からの社会保障のあり方、地域での暮らしなどについて、意見をまとめておこうと思う。

さて、上京していた19日に、長年ご支援いただいていた元高校教諭の松本公子先生が亡くなられた。先週の大崎鉄治さんにつぎ、志ある方々の訃報が続く。松本先生の訃報は20日夜に熊本に戻ってから知ったが、その日の午後がお葬式だった。参列できなかったことが心残りだ。お連れ合いに、お悔やみの手紙とともに、香料をお届けした。

実は松本先生は、高教組の女性部の部長も経験された方で、男女共同参画という言葉も、出産・子育て支援の制度も無い時代から、働きながら子どもを育ててこられた。今では、教員と公務員は、働く女性の中では比較的充実した制度の下、就労・子育てが出来るようになっている。もちろん諸外国に比べれば不十分だが。そんな公務員の諸制度が実現できたのも、県教委や県当局を相手に、松本先生を始め多くの組合員の皆さんが、現場の切実な声を、交渉を通じて訴え、提案してこられたからだ。当たり前のように始めから制度がある訳ではないことを、若い方々は知っておいていただきたい。

そんな松本先生は、数年前に末期ガンを宣告され、これまで病と闘ってこられたそうだ。私自身はこの事実を今年の2月に知った。2月7日に、男女共生社会を実現するくまもとネットワーク主催で、熊本市の男女共同参画推進条例の制定についての経過を確認し、抗議するための学習会を開催したが、そこに病をおして参加なさっていた。この条例、市執行部案を骨抜きにして、基本法からかなりレベルダウンした内容の改正案を市議会保守派が提案し、強行採決して出来上がったしろものだ。

一連の報告の最後に質疑の時間があったが、松本先生は手を挙げこう発言された。「熊本市の男性・女性の担当職員の皆さんが、熊本市男女共同参画推進条例検討委員会の意見を受けて、共に条例案を作り上げてこられたことを嬉しく思う。しかし、それを市議会がこんなひどい内容にしたことが許せない。長年私たちが取り組んできたことが何だったのかと思う。ガンのため私には時間がない。これから孫たちが生きる社会は、男女の性の違いに拘わらず、人間としての可能性が伸ばせる社会であってほしい」と。重いメッセージだった。

わずか2ヶ月前のそこでの凛としたお姿が目に焼き付いている。松本先生の命を削るような発言と思いを、私たちはしっかりと受け止め、あきらめることなく取り組んでいかなければと思う。あのような条例を通してしまう地方議会の客観的状況認識と社会科学的知識の欠如は、世界水準からほど遠く、熊本市の子どもたちが柔軟性を持ち、包容力のある世界人になっていくことを阻害しかねない。松本先生はそのことが心配でならなかったのだろう。

熊本県も決して進んでいるわけではない。相変わらず課長以上の女性管理職は遅々として増えない。女性が劣っているからではない。長年女性を幹部へと育ててこなかったためだ。また、昨年秋の新県計画策定過程では、「男女共同参画が気にくわない」職員たちにより重点施策から外されようとした経緯もある。この情報が入り、私はネットワークを駆使して、大至急パブリックコメントで意見をお願いし、知事がご存じない顛末を直接知事宛に手紙にし、結果的に重点施策に入った。もし、24もある重点施策の一つに「男女共同参画」を入れることができなかったら、研究者・教育者としての経験から「女性は優秀だ」と常々おっしゃる蒲島知事は、大恥をかくことになっていただろう。

そして、男女共同参画が、県計画の重点施策に入ったので、一時はなくなるかもしれないと噂された「男女共同参画・パートナーシップ推進課」も、「男女参画・協働推進課」と改名しなんとか存続した。

男女共同参画を正しく理解していない人は少なくない。「男性が作ってきたシステムを壊す女性の権利拡大」とでも思う人がいるとすれば、それは根本的な誤解だ。むしろ行き詰まった現代社会において、男性こそが救われ、働きながら、家庭や地域とのつながりや係わりを見いだしていける道がそこにある。現下の経済危機により、女性の就労人口はますます増えていく。むしろこの時期は、男性・女性それぞれが、働き方、働くことの意味、働く上での環境や条件整備、そして生き方を、一緒に問い直すためのいい時期ではないか。

天国の松本公子先生も同じ思いでおられることだろう。これからもひるむことなく、仲間たちとともに、先生の志を受け継いでいきたい。


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