衝撃的な映画「母なる証明」 [みどり日記]
昨年末、慌ただしい中、時間を作って映画を観にDENKIKANに出かけた。シネコンにも時々行くが、やはりポップコーンの臭いのしないDENKIKANで、入れたてのコーヒーを飲みながらの映画鑑賞の方がいい。とてもリラックスできる。
それで、どうしても観たかった映画とは、韓国のポン・ジュノ監督の作品『母なる証明』(原題は『Mother』)だ。前評判も高く、楽しみにしていた。ポン・ジュノ監督と言えば、『グムエル』しか知らなかったが、先入観無しで観た。一言でいうと、社会派ミステリー映画。ややドキュメンタリー的な要素もある。人間や母性を、殺人という題材を通して、真正面から描いている重い映画だったが、不思議と後味は悪くない。
ネタバレになるが、ストーリーは、知的障害のある息子トジュン(ウォンビン)と、母親(キム・へじゃ)の関係性を描きながら展開する。その関係性は、彼らだけが作ってきたものではなく、紛れもなく他の家族、周囲、そして社会が作ってきたものであることを、痛烈に感じさせられた。私も一緒に行った夫も、障害のある人たちやその親御さんたちと関わりのある仕事をしているだけに、改めて、これまで出会った方々の言葉にならない厳しい現状に、思いを馳せた。
ポン・ジュノ監督のこの作品は、今年のカンヌ国際映画祭のある視点部門に出展され、高い評価を得ている。主演女優のキム・ヘジャの鬼気迫る演技が、この作品の核になっていることは誰もが認めるところだろう。細々と用意された様々な伏線も、後でつながる。最初から最後まで、スクリーンから目が離せず引き込まれ、衝撃的なラストへと導かれる。ただ、ハリウッド映画のような娯楽性は無いので、嫌いな人は嫌いかもしれない。後に家でDVDで観るよりは、今、映画館でこそ観るべき作品だと思った。この映画を観た者同士で語り合うのもいい。解釈が微妙に違う点もあるはずだ。
それにしても、韓国では80年代に映画作りを学んだ人たちが、今、第一線の監督や脚本家として活躍している。金大中大統領の民主化政策で加速された文化の開放と支援政策が、今、花開いている。経済的にも、韓国の映画やドラマのソフトは、世界的にも大きな市場となっている。日本でも、邦画人気が高まってきたが、ハリウッド物があまり得意ではない(いいものもあるけど)私としては、嬉しい限りだ。