もう味わえない大石そば [みどり日記]
熊本市紺屋町の老舗「大石そば」は、2008年12月に店を閉じた。店主の大石桂二さんが病に倒れたためだった。療養から一年と数ヶ月、何とかまた開店しないかとの長年の贔屓の皆さんの思いや、何よりご本人の思いも虚しく、5月3日に他界された。昭和8年生まれ、享年77歳だった。昨日は、大石桂二さんを偲ぶ会が、14時から17時まで開かれ、私も弔問させていただいた。
そば好きの知人に連れられて大石さんを初めて訪れ、通うようになったのは、ここ10年くらいだろうか。お店は、江戸、明治、大正、昭和を経て平成の今につながっている歴史と、その時々店を訪れた人々の息づかいが聞こえるような佇まいだ。そして、女将さんの品のあるやさしい笑顔にいつも癒された。釜の近くでは、職人気質のご主人が蕎麦を茹でておられた。ちなみに私は、何故か決まって暑い日も寒い日も、天ぷら蕎麦をいただいた。
昨日の偲ぶ会には、大阪で働いておられる次女の貴和子さんも駆けつけていた。実は、大石そばさんとは、貴和子さんが津田塾大学の後輩であったことでもつながっている。県内の在住の卒業生が毎年開催している同窓会で、仕事で在住していたマレーシアから戻ってきていた貴和子さんと初めて会い、大好きな大石そばのお嬢さんと知り、それからのお付き合いも続いている。
大石さんご夫婦には、貴和子さんとお姉さんの二人のお子さんがおられるが、お母さまも寂しくなるので、貴和子さんは熊本に戻ってくるとおっしゃっていた。そして大石そばの店舗も残し、そば店ではないかもしれないが、新しいことを始めようかとも。紺屋町の佇まいとその一角の中の大石そばのなつかしく心落ち着くお店が、またあらたな歴史を刻んでいくことを楽しみにしたい。
大石桂二さんのご冥福を心よりお祈りいたします。